大自然とセッション!

a915b211.jpg

(前編のつづきです…)






 「あっ!あそこ、ほら、みて!」と、突然一人が叫んだ。


 「ええっ、どこー?」


 全員一斉に指さす海の方を見る。

 
 海面にザバっと背ビレが見える。



その瞬間、自分でも押さえられない感情がわき上がってきた。


普段は理性という感覚で押さえ込んでいる感情が、
そのまま頭の上を突き抜けていき、
知らないうちに大声で叫んでいる自分がいた。




「イルカですよ!はい!みんなで拍手〜!」とスタッフが言う。

すると、乗組員全員で歓声をあげる。


「わー!!」


「きゃー!!」


イルカは、子供の声や女性の声がとても好きらしい。

遊び心が旺盛で、陽気で楽しい雰囲気が大好きなのだ。


スタッフの一人が、「それじゃ、みんな用意して!」と叫ぶ。

 ボクたちは、興奮と嬉しさで、

 はやる気持ちを抑えながら3点セットを付けた。
 

 「レディー」の合図で、みんなはボートの脇に潜水準備体制をとる。


 「ゴー!!」のかけ声と共に、一斉に素早く、静かに海に潜り込んだ。



初めて泳ぐ外海に恐怖する暇もなく、水中で左右を向いて彼らを探す。

3匹ほどの群れが、ゆっくりと海底を泳いでいる。

そのうちの1頭が我々に気づいて、

「遊ぼうぜ!」という感じで、スゥーっと近づいてきた。


ボクは無我夢中で、水中に潜っていった。

そしてイルカのマネをして、体を回転させながら
水面に浮かんでくる時、目の前をイルカが通り過ぎた!


イルカたちが会話をする時に使う鳴き声というのか、
額にあるメロン器官から発するエコーロケーションの音が、
キューイ、キュイ、ピュイーンと音を発している。

水中は空気中よりも、音が伝わりやすいと聞いていたけど、
本当にそのかん高い音が、耳と言うより、体全体に響くような
かたちで伝わってくるんだ。


底の方から見定めて、ゆっくりとこちらに近づいて来ては、
白いおなかを見せて「くるり」とひと回り。

そして、みんなとしばらく一緒に泳いでは、
またスーッと底のほうにに去っていく。


追いかけようとして、必死に泳いでも、全然向こうの方が早い。
がんばってみても、やっぱり彼らにはかなわないし、
こちらがあせっていると、イルカの方が相手にしてくれない。

彼らはどうやら好奇心旺盛で、人間と泳ぐのが楽しいらしい。

要はこちらがどれだけ心を開放し、楽しく遊ぼうとしているかが
大切なんだと思った。

だからこちらも、一人で水中をくるくる回って楽しそうにしていれば、
イルカはスーッとそばに寄って来て、同じようにくるんと回る。


気まぐれなイルカたちがどんどん先に行ってしまい、
ボクたちが追いかけても追いつけない状況になると、
みんなはいったんボートに戻って、またイルカのそばまで行き、
もう一度「レディー&ゴー」となる。

何度か、そのようなセッションを繰り返した。


今まで感じたこともない不思議な感覚を受けながら、近くで遠くで、
とても楽しそうに、優雅に泳いでいるイルカたちを見つめていた。

外洋の海は、なんとも言えない深い深いコバルト色のブルーで
染められている。

でも、水中に潜ると、遠くまで見えるくらい水が透き通っていて、
水面からの太陽の日差しが、何本もの光の矢羽になって、
まるで鏡のように、逆さまに光を映しだすようにきらめいている。

水中は、イルカの発する音でとてもにぎやかだ。

それにしても、イルカの泳ぐ姿って、ほんとうに美しい。

彼らと泳いでいることに夢中で気づかなかったのだけど、
いつの間にか相当深いところまで潜水している自分がいた。

普通は、どんなにがんばっても、ある程度の限界と恐怖心で
水面に上がってきてしまうのに、
イルカと無我夢中で遊んでいる時は、
どうやら自分の意識のなかでの限定が解除されているらしい。

まあ、もっともイルカと一緒じゃなければ、とてもこのような外洋で、
海底がはるかに遠くにあるようなところで、泳ぐ気にはなれないだろう。


頭では何も考えず、体全体でただ感じるものだけを感じながら、
イルカと一緒に遊ぶという事は、
なんて素敵で、不思議で、幸せなことだろう!

少し手を伸ばせば届きそうなすぐ近くを、
見事な泳ぎで自由自在に通り過ぎていくイルカたち。

その優しいまなざしの中に、高度な知性をボクは感じることができた。

実際彼らを見てると、ほんとうにそのように思ってしまうんだ。

ただ、イルカの目はほとんど見えないらしい。
おそらくイルカやクジラは、エコーロケーションシステムで、
ボクらの心の波動を読みとり、ボクたちが何を考え、
何を感じているのかすら分かってしまうのだと思う。

心を開いて、楽しい思いの人にはスーッと近づいてくるし、
怖がっていたり、心を開いていない者には、遠くで見ていたり、
相手にしなかったりして近づかない。

彼らは我々人間が感じ取っているものとは別の感覚で、
この世界をモニターしているのだろう。

一緒に泳いでみて、それが本当によくわかった。


だた、ボクは別に、イルカをいたずらに神聖視したり、
我々と違ったその能力に魅力を感じているわけではないし、
イルカやクジラを、声高らかに自然環境保護の
代名詞のように言うつもりはない。

そして科学技術や文明そのものを否定して、
単に原始帰りを提唱するような、
単純な文明批判論を肯定するものでもない。


でも、地球は一つの大きな意志を持った生命体である
という説(ガイア説)があるけれど、
なんとなくボク自身は幼い頃からそのように感じていた。

地球の心はとても広くて大きいから、
あらゆる生物をその中で生かし、
育んでくれている存在なんだと思う。

だから言わば、ボクらは全て、
母なる地球の子供達であり、
同じ母から生まれた兄弟なんだと思っている。

だから環境問題とか、自然破壊の問題とかを、
都会の机の上であれこれ議論しているよりも、
一度小笠原で野生のイルカと一緒に泳ぐほうが、
頭ではなく身に染みてその大切さが解るような気がする。


感動したことは他にもある。

一緒にボートに乗っていた人達の、
イルカと泳ぎ終わってから戻った時の表情だ。

皆おそらくは、今までの人生で一番いい笑顔を
見せていたのではないかと思われるような、
なんともいえない屈託のない顔をしている。

中には50才ぐらいであろう男性が、
まるで幼い子供のようにはしゃぎながら、
笑顔でボートに上がってくる。


今世界各地で、イルカの不思議な力によって
心を癒されたという人たちが、数多くなってきている。

特に子供達の幼少時に受けた虐待の心の傷に対して、
イルカのセラピーは効果があるという。

ボクには詳しいことは判らないけれど、
そのような不思議な能力がイルカにあるということが、
なんとなく体験的にわかったような気がした。


だって、この美しい海の中でイルカと泳いでいると、
本来は限りなく素直で、また優しい人間でありうる
本当の自分が分かってしまうんだ。


このすばらしい大自然と生き物たちの前で、
ボクたち人間は、いったいどれだけ謙虚になれるだろうか…


「海は優しい宇宙空間のゆりかごだ」

と誰かが言っていた。


その宇宙のゆりかごの中で、恐れも疲れも超えてイルカと泳ぐ。

何の契約も主従関係もなく、今ここで共に戯れることの、
かけがえのない素晴らしさ、美しさ!


そしてボクは、この自然とイルカたちとの言葉を越えた会話が、
実は本来の自分との会話であることを知った。

大自然はこの生き物を通して、我々に何を教えようとしているのだろう。

自由、明るさ、屈託なさ、軽やかさ、好奇心、遊び心、優しさ、素直さ、
愛らしさ、幼子のような心…


人間にその大切さを教えるために、
イルカはこの地球上に生まれたのかも知れない。



 イルカと出会い、自分と出会う…




ボクたちに、一時の不思議な癒しと感動を与えて、

彼らはまた、何事もなかったかのように、

風のように悠々と遠くにいってしまった…


波は穏やかにうねり、空はどこまでも青く澄んでいる。

小笠原の透き通るほどの深いコバルトブルーの海で、

イルカの背ビレだけが、キラキラと遠くできらめいている。



 それは時間のない時間。

 自分じゃないもう一人の真実の自分。


ボクはその時、自分でも無意識のうちに、

大自然の一大芸術を創り給うた神に、祈りを捧げていた…




よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

海に住んでるイカした友だち

東京竹芝桟橋から船で約28時間。

ボクはようやく、小笠原諸島の父島に到着した。

慣れない長時間の船旅に、少し疲れもあったが、
船をでて地に足がつくと、ふらつく足どりとは裏腹に、
気持ちは遥か沖合いの海まで飛んでいた…

東京から約1000kmも離れた距離にあるこの亜熱帯の島。

よく考えてみれば、ここは同じ東京都じゃないか。28時間といえば、
飛行機なら地球の反対側まで行ってしまうほどの時間だ。

そう考えると、同じ日本でありながら、
実は、日本から一番遠いところなのかもしれない。

出迎えてくれた島の人達の明るい歓迎の笑顔に、
なんだかホッとして長旅の疲れが癒されていく。

 
 
 そうまでして、なぜこの遠い島まではるばるやってきたのか。
 
 
 その答は、これからボクが向かう、海の彼方にある。




到着した翌日は、まずは彼らと一緒に泳ぐために、
3点セットをつけて泳ぎの練習をすることにした。

3点セットとは、
ゴーグル(水中メガネ)、スノーケル、フィン(足ひれ)のこと。

この3つが彼らと泳ぐための3種の神器だ。

これさえあれば、あとは多少の泳ぎと、素潜りの練習をすれば、
彼らとセッションする事ができるんだ。

あまり難しく考えたり、大げさなアクアラング(潜水用具)セット
などはいらない。

それよりも、より自然にちかく、より身軽な格好のほうが、
彼らと近づくには都合がいい。

まあ練習とはいっても、小笠原の海の美しさや、
澄み切った水の透明さや、
恐れずに人間に近づいてくる魚たちに感動している合間に、
潜ったり、耳抜きをしたりして、楽しくしていくものなのだが…


小笠原の不思議なオーラに包まれて、
なんともいえない幸福感が、心の底から湧いてくる。

静かな波に揺られながら、しばらく力を抜き仰向けになって浮かぶ。
真っ青な空に白い雲が気持ちよさそうに流れていく。

全身で海のエネルギーを吸収している感じだ。

小笠原の自然を満喫していると、
本当に時間があっという間に過ぎていってしまう。


さあ、いよいよ3日目はボートに乗り込んで、
沖合いまで彼らに会いに行く。

今回ボートや、ガイドなどでお世話になったのは、
父島扇浦にあるサーフショップ「RAO」という
サーフィン用具ショップと島の遊覧をしているお店。

ここのスタッフは、みんなとびっきり明るく、さわやかで、
父島に関してすみずみまで知りつくしている人達だ。

またこの島で、最初に「彼ら」とコンタクトをし、
長い時間をかけて、彼らとのコミュニケーションをしてきた結果、
お互いの心の交流が始まり、深まり、
今では一緒に泳いで遊ぶことが出来るようになったのだ。









 彼らとは・・・・・ そう、野生のイルカたちのことだ。






出発前に、スタッフからイルカと交流するときの心得や、
注意事項の指導を受ける。
3点セットをもってない人は、ここで借りることもできる。


RAOの大型ゴムボート、キャプテン・ゾーディアック号に
10名ほどの人が乗り込んで、二見湾というところを出発。

しばらく父島の横を沿うようにボートは進んでいく。
今日も晴天に恵まれて、照りつける日差しが刺すように暑い。

少し沖合いに進んだ時、小笠原名物のアオウミガメが、
海上に顔を出してのんびりと浮かんでいる。


「ウミガメと出会ったときは静かに」とスタッフから言われた。


とっても警戒心が強いので、ボートが近づくと、はっと気が付いて
水中へ潜ってしまった。


しばらくすると、「あっ、いた!イルカだ。」という声があがった!

ボクも目を輝かせて指さす方をみた。

確かに背ビレのようなものが見える・・・



「あー、あれは…サメですねぇ…」とRAOのスタッフが言った。

「さ、サメ?ですか…」

一瞬、ゾーっとしたが、さすがは小笠原だと思った。
なにせ実際に海で泳いでいるサメなんて、この目で始めて見るのだから…

ボートは父島の上側にある兄島という島の近くの
浅瀬で、とても珊瑚がきれいな兄島瀬戸という場所に
いったん碇をおろして、ここで、スタッフによるイルカと泳ぐための
潜水の講習を受けることになった。

おのおのが3点セットをつけて海に入っていく。

強烈な日差しに照りつけられて、火照った身体を包み込むような、
優しくてやわらかい海の水だった。


まさにエメラルドグリーンの海。

メガネをつけて水中をのぞくと、そこはまるで別世界だ。

いま、目の前に見える光景が本物なのか、
夢なのか判らないくらい美しい世界だ。

浦島太郎が竜宮城で時が経つのも忘れてしまった
気持ちがよくわかる。

それにしても、珊瑚の種類がかなり豊富で生き生きとしている。

ボクは何度もスキューバ・ダイビングで水中の世界を見たことがあるけど、
今まで、こんなにもきれいな海を見たことがなかった。



スタッフの指導を受けて、ボクもそれなりに2、3mほどは
潜れるようになってきた。

最初は、なかなかうまく潜ることができなかったけど、
だんだんとコツがわかってきた。

これは何にでも共通する事なんだけど、
物事をうまく運ぶためには、
いかに力を抜いてリラックスできるかがポイントだと思う。

潜る時も、ただがむしゃらにバタバタ足を動かしても、
なかなか思ったほどは進まない。

頭を海の底に向けてまっすぐに下げ、そこでフッと力を抜くと、
スルスルーっと体が沈んでいく。

体が沈んでいき、足まで全部が海に浸ったら、
そこで足ひれをイルカのように滑らかに動かすと、(ドルフィンキック)
不思議なくらい簡単に潜っていくことができるんだ。

こうやって自然に触れていると、普段は眠っている全身の感覚が、
とても研ぎ澄まされてくるのを感じる。

海を通して、なんだか地球の息づかいまでもが
伝わってくるような感じだ。



皆一通りの練習を終えると、イルカを探しに、
またボートは沖に向けて走り始めた。

なんといっても探している相手は、
人間の都合の良いように飼い慣らされた水族館のイルカではなく、
この海を自由に泳ぎまわる、野生のイルカたちなのだ。

日によっては、出会えない時もあるという。

彼らはこの大自然の法則に沿って生活している生き物だ。
だからこちらも、心を大自然の法則に波長を合わしていくことによって、
彼らと遭遇する確立も高くなっていくのではないだろうか…

と、ふとボクは考えていた…


その時、ボクのなかで、なにか素晴らしい予感がするのを感じた。
いままで味わったことのないような、とても素敵なことが起きるような、
そんな感じがしたのだ。



そしてその予感は、まもなく現実のものとなる…

(後編につづく…)

新シリーズ!?


ドーン・コーラスをお読みのみなさま、こんにちは!

最近、多忙でなかなか更新ができずにいましたぁー。


バンド男シリーズもみなさんのおかげで、随分長く続けられています。
ほんとうにありがとうございます!

というか、かなり不定期な更新ですみません!m(_ _)m

さて今回は、このブログの主題でもあるドーン・コーラス編もたまには
入れて欲しいという一部の要望?もありまして、バンド男の合間にも
いろんなコラムやエッセイを書いていこうと思います。

いや、そんな大したものではありませんが…(^_^;


第一弾は、なんちゃってエッセイ風として、今からずいぶんと前の話に
なるのですが、ボクにとって、ほんとうに素晴らしい体験をしたことを
お話しします。

以前から、海洋性民族だったので、海が大好きだったボクが、
さらにヤバイくらい、海の魅力にハマってしまったエピソードです。

お楽しみに!

恋の大気圏突入!…2


『シャア少佐!助けて下さい!げ、減速できませんー!』

『残念だが、ザクには大気圏を突破する能力はない…
 しかし、無駄死にではないぞ…』

(すいません、お約束のガントリです…)



「カミエルくん、おっはよー!」

「あ、お、おはよう…」

あの日以来、毎朝彼女は少年に声をかけてきました。



少年は、自分がいつの間にか、恋の重力に引かれて落下している
ことに、まだ気づかずにいました。

なぜなら、その時の少年は、それこそ自分がまだ宙に浮いているような、
そんな気分を味わっていたからです。


『あ、あのね、また今度来てもいい?
 その時にね、私と弥生ちゃんで、なにか差し入れ持ってきてあげるね』


授業中も、少年の頭の中には、あのとき宮里さんから言われた言葉が
何度も何度もリピートしていました。



「おい、カミエル…」

「…」

「カミエル!」

突然、先生の声が響きました。

「あ…え?は、はい?」

「なにをボサーっとしとるか!おまえ!今の話聞いていたのか?」

「あ、すいません…聞いてませんでした…」

「ばかもん、もっとシャキっとせんかぁー!」

そんなやりとりに、クラスのみんながクスクスと笑っていて、

ふと見ると、宮里さんもこちらを見て笑っています。

ちょうど6月になり、梅雨と衣替えの季節を迎えていました。



そんな頃…

「カミエル、オレな、決めたぞ!うん」

なにやら岡本君が、決意をした目で話しかけてきます。

「な、なんだよ、なにを決めたんだ?」

「ふっふっふ…、新しいギターを手に入れるんだよ!」

「な、なにー、ほんとか?今度はどんなヤツだよ?」

「ふっふっふ…まだ、教えない…」

「なんだよー、そこまでいっといて、そりゃねーだろ!」

「まあ、レスポールじゃないことは確かだ、オレ達も
 もっと音楽性に幅をもたせないといけないからな、うん」

「あ、わかった、ストラトだろ?リッチーやエディみたいな!
 おまえテレキャスって感じじゃないしなぁ、っていうか
 おまえにはテレキャス似あわねー!
 うーん、なんだよ、なんにするんだよ?」

「まあ、それは後々のお楽しみということでな、うん。
 そこでだ、オレはそのために金を貯めなきゃならん」

「おう、それで?」

「新たなギターを買うには、最低でも4〜5万は必要だしな」

「あー、わかった!バイトでもはじめる気だな?」

「いや、オレはバイトはやる気はないぞ、囲碁とギターの練習で
 忙しいからな」

「そんじゃ、どーすんだよ?」

「オレはな、今親から毎日の昼飯代として500円もらっている。
 今まで学食にいったり、パンを買ったりしていたんだがな…」

「うん、それで?」

「今日からこれを使わずにコツコツ貯めていこうと思ってるんだよ。
 10日で5,000円、一ヶ月にすると昼飯代もらえるの平日だけで
 22日間だろ。単純計算で約11,000円になる。
 そうすると4〜5ヶ月でギターが一本買えるってことになるよな」

「えぇー?確かにそりゃそうだけど、おまえ昼飯はどーすんだ?」

「今日から、昼飯を抜く!」

「ま、マジかよ…」

「ああ、その分朝と夜に食いだめをするんだ。
 まあ、ちょうどオレも最近太り始めてたからな、
 ダイエット効果もあるしな。
 なにより、ギターのためだな、うん」

「おいおい、育ち盛りの少年の言葉じゃないぞ、それ。
 っていうか、腹が出てきたオッサンじゃあるまいしよー。
 それにしても、昼飯抜きかぁ…
 あー、わかったー!
 おまえ、この前女の子達がいっぱいバンド見に来たもんで、
 ちょっと色気づいたんだろー?へっへっへ…このぉー」

「ばーか!なにいってんだ!オレは断じてそんなことはないぞ。
 あくまでも新しいギターを買うためだからな、うん」

「おっほっほ…まあ、そういう事にしておきますわよ。でもさぁ、
 この前はまんざらでもなかったんじゃないのぉー、オカモトくーん!」

「ふん、まあ、なんとでもいうがいいさ。とにかくオレは今日から
 昼飯抜きでいくぞ、うん」


茶化してはみたものの、少年は岡本君の決意を前に、ちょっと
感動をしていました。

『こいつ、ほんとにギターが好きなんだなぁ…
 オレには昼飯抜きなんて、ぜったい出来ないと思うもんな。
 ちょっとおカタいところもあるけど、コイツってひたむきだよなぁ…』



そうこうしているうちに一週間が過ぎ去った頃、

宮里さんが飯田さんと一緒に少年に話しかけてきました。

「ねえ、カミエルくん。カミエルくんの好きな食べ物ってなーに?」

「え?食べ物?」

「そう、今度弥生ちゃんと一緒に差し入れ行く時に、せっかくだから
 カミエルくんの好きなものを作っていってあげようかなーって、
 2人で話してるんだけど…」

『ええー?マジですかぁー』

少年はちょっと信じられない展開に戸惑っていました。

「いや、もう、なんでも!オレ、基本的に好き嫌いないから…
 なんでもいいよ、ほんと、うん」

(っていうか、君の作ったものならなんでも食べるよー!!)

「それじゃ、けっこう量とか食べる方?」

「うーん、そうだね、けっこう食べるかも…」

「ふーん、それにしては、ずいぶんほっそりしてるよねぇ」

「ああ、オレ食ってもあんまり太らないんだよ、ヤセの大食いって
 よく言われるんだよね」

「へー、そうなのー?うらやましぃー。
 それにしても、その細い体のどこにあんなドラムを叩くような
 エネルギーがあるのか不思議だよー」

「ははは…そうかな?確かにドラム叩くようには見られないなぁ…」

「そのギャップがまたいいのかもね。ねぇ、弥生ちゃん?」

「え?う、うん…」

飯田さんは普段からおとなしく、クラスでも決して目立った存在では
ありませんでしたが、なぜか宮里さんとはとても仲が良かったのです。

「それじゃ、来週の土曜日あたりはどうかなぁ?
 ちょうど、お昼時に行けば、みんなで食べれるでしょう?
 バンドのみんなの分も作っていってあげるからね」

「ほんとにー?みんな喜ぶと思うよ。(岡本よかったなー昼食えるぞ)
 でも、いいの?なんだか悪いなぁ…」

「いいの、いいの。わたしたちは大丈夫だから、バンドがんばってね!」

「う、うん…ありがとう…」


ドキドキドキ…



放課後、D組の武田君が少年のクラスにやってきました。

「おいおい、カミエル、岡本!ちょっと大事なこと忘れてないか?」

「へ?…なんだよ、大事なことって?」

「まーったく、のんきだなー、君たちはー。
 バンド名だよ、バンド名!
 そろそろ、ちゃんと決めないとまずいぜー」

「あ…そうか、まあそう言われれば、そうだな。
 そういえば、オレらのバンドって名前決まってなかったよな」

「最近な、オレらのこともだんだん知れ渡ってきただろ?
 良く聞かれるんだよ、バンド名のことさ」

「ほぉー、そうなのかぁー?」

「うーん、でも、バンド名ってのはけっこう重要だな、うん」

「おっ、岡本、なんかいい案あるのか?」

「いや、まだ思い浮かばんがな、名は体を表すというからな、うん」

「そうなんだよ、やっぱりだんだん知名度があがっていくとな、
 オレ達もプロモーションが必要になってくるだろ?
 ちゃんと、自分たちをアピールしていかないとな」

「ふえー、武田って、そんなことまで考えてんのか?」

「フッフッフ…オレはこのバンドのマネージャーも兼ねてるからな。
 いずれはこの学校全体に知れ渡るようにしたいんだよ。
 もちろん最終的にはメジャーをめざすけどな」

「すっげー、頼もしいな、武田ー。
 よっしゃー、そういうことならバンド名、みんなで考えようぜ!
 あー、でもどうやって決める?」

「まぁ、それぞれがイイと思うものを持ち寄るってのはどうだ、うん」

「おー、そうだな、んじゃ1週間以内にそれぞれ考えてくるって
 いうのはどうかな?」

「よし、決まりだ。その中からみんなで決めることにしようぜ!」

「おおぉー、なーんかバンド名とかも決まってくると、ますます
 バンドも本格的って感じがしてくるよなー」


こうやって自分たちで一つ一つバンドをつくりあげていくことに、
少年はたとえようのない喜びを感じていたのでした。


(つづく…)



よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

恋の大気圏突入!…1


「…あ、あのね、今度ね、友達と練習見に行ってもいい?」


「え?」


ドキドキドキ…



『マジで!マジっすか!』


少年は舞い上がりそうな気持ちを抑えるのに必死でした。

なんせ相手は、入学当初から気になっていた女の子なんですから!

あ、ちなみに彼女の名前は宮里悦子さんといいます。
周りのみんなからは「えっちゃん」と呼ばれていました。


『おおぉーし、オレにもようやく春が巡ってくるのかぁー?(早いって)
 あ、いやいや、まだわかんないよな、別にバンドがものめずらしい
 だけかもしれないしな… 
 あーでも、バンドを見に来てくれる人がいるなんて、
 めっちゃ嬉しいぞー』


少年はニヤニヤしながら、教室に戻ると、さっそく岡本君に話をしました。

「おーい、おっさーん!いやー元気かねー!うーーん?」

「な、なんだおまえ、ヤケに嬉しそうじゃないか、うん」

「え?そう?いやぁー、そんなことないよ、へっへっへ…」

「なんだか、気味がわるいぞ、なんかあったのか?」

「いやぁ、なんにもぉー、へっへっへ…
 それにしてもオカモトぉー、おまえギター弾いててよかったなぁー」

「なーんだよ、気持ち悪いなー、おまえ変だぞ、うん」

「いやぁー、実はさぁ、クラスの宮里って女の子いるだろ。
 彼女がさぁ、友達連れて、バンドの練習見に来たいって
 いってるんだよぉー、どーするー?」

少年はすっかり舞い上がってます。(^_^;

すると岡本君は

「え?なに?女だと?なんだ、女がくるのか?」

と、予想に反してちょっと怪訝そうな表情です。

「あれ、なんだよー、女の子が見に来るんだぜ!
 おまえ嬉しくないのかよー」

「うーん、オレはなんだか女は苦手なんだな。
 オレはちょっと困るなー、練習見に来られるのは!」

「どえー?マジかよー!嬉しいじゃんかー、女の子だぞ、
 お・ん・な・の・こ!」

「うーん、オレはそういうのイヤなんだなー、
 チャラチャラしてるようでな。
 オレはそんなことでバンドを始めたわけじゃぁないぞ」

「はぁ?おまえさぁ、修行僧じゃあるまいし、
 普通は嬉しいだろ、普通は!」

「とにかくオレはあんまり気が進まないな。
 バンド練習に集中できなくなりそうな気がするぞ」

「うっ…いや、そりゃ、まあ、ちょっとは気にはなるけどさ…
 あ、ほら、ギャラリーがいたほうが、やっぱ盛り上がるじゃんか!」

「ふん、ハナの下のばしやがって」

「な、なんだよぉー、そのつれない態度はよー。
 でもまあ、とにかくさ、ちょっとくらいはいいだろ?
 せっかく見に来たいっていってるんだからさぁ」

「ふん、キチンとバンドの練習に集中するんならいいけどな、
 あんまり浮かれてるとオレはすぐ帰るぞ!」

「わ、わかったよ、ちゃんとバンドに集中するからさぁ」

少年は、なんとか岡本君を説得しました。


『なんだよ、おっさん!こんなチャンスはめったにないぞ!
 お、そうだ!武田だ!武田ならきっとわかってくれるさ!』

そう思った少年は、授業が終わるとさっそくD組の武田君の
ところに行きました。

「おーい、武田ー!」

「おう、カミエル、どうした?」

「あのなー、実はさー…」

少年は武田君に先程の話をしました。


「な、なにぃー!マジかよー!」

「そうなんだよ、すごいだろ?」

「おおー、そりゃぁすげーな、いつだ?いつ来るんだ?」

「うおー、心の友よー!やっぱわかってくれるよな、この気持ち!」

「おう、ようやくオレ達もバンド見てくれるお客さんが出てきたかぁ。
 そういえばさ、最近よく聞かれんだ、バンドやってるの?って」

「そっかー、だんだん知れ渡ってきたんだなー、オレ達のこと」

「よーし、燃えてきたなー。
 やっぱバンドマンは人に見られてナンボだからな!」

「やっぱそうだろ?そうだよなー、それなのにさぁ、岡本のヤツ、
 あんまり乗り気じゃないんだよー。
 浮かれてないでバンドに集中しろよ!とか説教するんだぜ!」

「はぁ、なんだそりゃ?
 まあいいや、年寄りはほっといてさ、若者は若者で盛り上がろーぜ!」

「うぉーーし、さすがは武田だ!
 日にちはそのうち向こうから聞いてくると思うんで、
 楽しみにしてくれよな」

2人はすっかり舞い上がっていました。




そして、後日…

いよいよ彼女とその友達が、倉庫スタジオに来る日がやってきました。

その日は、学校が早めに終わる土曜日の午後。

いつものようにバンドの練習をする3人ですが、
どうも少年と武田君は落ち着きなくソワソワしています。

『おー、やべぇ、気になっちゃって練習に集中できねーよ』

少年は案の定、彼女が来るのが気になってしょうがありません。


「今、何時?」

「えーと、あ、もう2時になるな」

「そっか、一応2時って約束だから、そろそろ来る頃かな」

「ちょっと、外見てくるか?」



ちょうどその時…

チリンチリンチリン…♪

と、自転車のベルの音がしてきました。

それは、あらかじめ彼女と決めておいた合図でした。


「あ、ベルの音だ!キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!」

少年と武田君は速攻でスタジオの外に出て行きました。

岡本君は我関せずで、音量を落としてずっとギターを弾いています…



「こんにちはー」

彼女の声がします。


急いで倉庫のシャッターを開けると、そこにはなんと、
6人の女の子たちが自転車と一緒に立っていました。


「や、やぁ、どうも、早かったねー。道ちゃんとわかった?」

「うん、わかりやすい地図だったから、すぐにわかったよ。
 見たいっていうからみんなで来ちゃったけど、大丈夫?」

「うん、全然オッケーだよ。
 うわー、それにしてもたくさんで来てくれたんだねー」

彼女の他に、同じクラスの子が3人、他のクラスの子が2人…
他のクラスの子は初めて見る人たちでした。


すると、さっそく武田君はみんなに

「あ、オレ、D組の武田っていいます。ベースやってます、よろしく!」

と、さわやかに自己紹介をしています。

「あー、知ってるよー、武田くんでしょ!
 D組の私の友達がカッコイイ!っていってたよー」

と、同じB組の女の子が言いました。

武田君は美形なので、けっこう話題になっているようです。

『おぉ、さすがだなぁ、武田…すでにモテモテな雰囲気じゃんか』



その時、倉庫の中を見回していた彼女が

「ねぇ、ねぇ、カミエルくん、あっちでギターの音が聞こえるけど、
 もしかして、スタジオってあそこなの?」

「あ、うん、あのプレバブ小屋なんだ、ちょっと部屋自体は狭いから
 ドアあけて、外で見てもらうようになるけど。
 かなり音がうるさいよ、初めてだとビックリするかも」

「へー、楽しみだねー、なんだかドキドキしてきちゃった」

彼女は目を輝かせて言いました。

彼女のその横顔を見た瞬間、少年は胸の奥に、なにか「チクン」とした
痛みを感じたのでした。



ドキドキドキ…


少年は中学1年の時に、同じクラスの女の子を好きになって以来、
そのあと結局3年間、その子に片思いをしたまま中学を卒業して
しまったのでした。

そうです、少年はまだ女の子と付き合うことはおろか、好きな人に
告白することもしたことがなかったのです。

そんなウブな少年にとって、彼女はとても輝いて見えました。


ドキドキドキ…


少年がボーっとしていると、クラスの女の子の一人が

「あー、ほんとに岡本くんだぁー。
 ギターやってるって本当だったんだねー、すっごーい!」

と叫びました。

中でひたすらギターを弾いていた岡本君は、照れくさそうに

「なんだよ、なんだよ、たくさん来たなー、おい」

と引きつった顔で言っています。


『ったく、素直じゃないよなー、岡本は…本当はちょっと嬉しいくせに』



しばらくしたところで、少年はあらためてみんなに言いました。

「えー、今日はみなさん集まってくださり、ありがとうございます。
 一応、このバンドのリーダーをやっているカミエルです。
 まだメンバーが足りず、ボーカルもキーボードもいませんが、
 がんばって3人で演奏しますので、よろしく!」

そういうと、パチパチパチ!とみんなが拍手をしてくれました。

ちょっとした、倉庫ミニライブの始まりです。



「1,2,3,フォー」

ドラムのカウントで、まず最初は、ヴァン・ヘイレンバージョンの

「プリティ・ウーマン」です。


 ウオォォーーン!!

さっきまで静かに弾いていた岡本君のギターが音量を上げ、
突然うねりをあげました!

その音に、さすがに見ている人たちも驚いています。

3人は今までの練習の成果か、とても息の合った演奏をしています。

岡本君は、ギターを鳴らすといつものように変身しました。(笑)

武田君も、観客がいると、まるで水を得た魚のように生き生きと
パフォーマンスをしています。
彼は、なかなか天性のスター性をもっているようです。



『やっぱり、見てくれる人がいるのって、すっごい嬉しいもんだなぁ』

バンドを組までは、たった一人でドラムを練習してきた少年にとって、
それはとても充実感を感じるひとときでもありました。

その後も次々と、それまでのレパートリーを披露していく少年たち…

3人はボーカルがいない分、それぞれが声を張り上げて歌いました。




演奏中、少年は、たまにチラっと彼女のほうに視線を向けました。

すると、何度か彼女と目が合って、お互いにすぐ目をそらします。


一通り演奏が終わり、ちょっとしたライブ気分に浸った少年たちは
初めての観客である女の子たちの前で、深々とお辞儀をしました。


パチパチパチ…♪

みんなは拍手をしてくれました。


「すっごーい、ちかくで聴くと、こんなに大きな音なんだねー、
 迫力あったー」

「岡本くん、ギターうまいじゃない!見直しちゃったよー」

「武田くん、カッコよかったよ!
 今度あなたのファンだって子、連れてきてもいい?」

初めて生の演奏を聴いて、ものめずらしさもあってか、
みんなも楽しんでくれたようでした。

岡本君も、すっかり女の子たちとうち解けて話をしていました。



そんな時です…

彼女と一緒に、同じクラスの女の子が少年に話しかけてきました。

「か、カミエルくん、カッコよかったよ…」

「え?あ、ありがとう、えっと、ごめん、ちょっと名前わからなくて…」

「あ、わたし、飯田です、飯田弥生です…」

「あ、そうそう飯田さん、ごめんね、まだクラスの女子の名前
 よくわからなくて…」

すると、一緒にいた彼女、宮里さんが、

「もう、こんなかわいい子の名前も知らないなんて失礼ねー、
 弥生ちゃんだからね、カミエルくんちゃんと憶えてね!」

「あ、よ、よろしく飯田さん…」

「こ、こちらこそ…」

飯田さんは、小さな声でこたえました。


「それにしても、間近で聴くとすっごい音なんだねー。
 まだ耳がキンキンいってるよー。
 でも、思ってたよりみんなうまいんだもん、
 ちょっとびっくりしちゃった」

宮里さんは、少し興奮気味に話をしています。

「でしょう?けっこう音デカいんだよね、なんせちょっと前に
 苦情がきたくらいだからね(笑)」



しばらく雑談をしたあと、みんなが帰る頃になった時、
宮里さんが少年にこっそり話しかけてきました。

「あ、あのね、また今度来てもいい?
 その時にね、私と弥生ちゃんで、なにか差し入れ持ってきてあげるね」

「え?」


ドキドキドキ…


「あ、ああ、また、いつでも来なよ。
 オレら、毎日ここで練習してるからさ、いつもはシャッター閉めてるから、
 演奏終わったの見計らって、また自転車のベル鳴らしてくれれば
 わかるからさ」

「ほんとー。うん、また来るね。ベル鳴らすから…」


ドキドキドキ…


意識しないようにすればするほど、少年の鼓動は激しくなり、

ますます彼女のことが気になりはじめていました…

(つづく…)

(登場する人物の名前はすべて仮名です)



よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

スタジオ破壊命令 Vol.4

(前回からの続きです)


「おいおい、いったいどうなってんだ?」(小声)

「しらねーよ、なんか説教でもされんのかな…」(小声)

とりあえず、少年達は正座をしてその場で待ちました。


しばらくすると、おじさんがなにやらお盆にお茶と
お菓子を持ってやってきました。

少年達 「???」


「まあ、これでも飲みなさい」

そういって、おじさんはテーブルにお茶を置きます。

「え?は、はい…」

少年達は少し戸惑いもあり、その場で固まっていました。

「どうした、遠慮せずにあがりなさい」

「い、いただきます…」

少年たちは少し動揺しながら、震えた手でお茶をすすりました。

正座をしてお茶を飲んでいる少年達におじさんは、

「そう硬くならんでもいい、足を崩して楽にしなさい。
 まあ、こうやってきちんと謝りにきたことは、
 最近の若いもんにしてはなかなか良い心がけだな」

と、ちょっとさっきとは違う雰囲気で言いました。

そして、

「おまえたち、あんなに夜遅くまで夢中でやっているんだ…
 楽器を演奏するっていうのは面白いかね?」

と、聞いてきました。

「は、はい。面白いです…」

少年がこたえました。

「ふーん、そうか…」

しばらくおじさんは黙っていました…

少年たちはなにを言っていいのかわからず、黙って事の成り行きを
見守るしかありませんでした。


するとおじさんは、突然、訥々と若い頃の身の上話を始めました。

「ワシの若いころはなぁ、軍隊で満州に行っておったんだよ。
 その時ワシはな、軍楽隊でトランペットを吹いておった。
 軍隊にもなぁ、ちゃんとブラスバンドがあったんだぞ。」

「え?そ、そうなんですか?」

少年はとりあえず、うまく相づちを打つことにしました。

「おお、そうだ、なかなか上手かったんだぞ」

そういうと、いきなりおじさんが奥の部屋から、すっかりススけて
色も褪せているトランペットを持ってきました。

「もう、以前のようには吹けんがな、昔はかなり練習したもんだ」

「か、カッコイイですね、トランペットなんて」

「そう、こいつは楽団の花形だったんだぞ!」

おじさんは、機嫌良く話し始めました。

「おまえたちもなぁ、もっときちんとしたマーチが出来るような
 バンドを組まなくちゃいかんな、だいたい3人でなにができる。
 もっと多人数がいるだろうバンドというものは…」

どうやら、おじさん的には、バンド=ブラスバンドというイメージが
定着しているようでした。

その後も、戦前・戦中・戦後の話を熱く語っていたおじさんの
話は1時間以上に及びました。 (^_^;

少年達もさすがに足が痺れ、いつの間にか正座から
体育座りへと変わっていました…

しかしおじさんの顔は、さっき玄関に出てきた時の顔とは
まるで別人のような、穏やかな顔になっていました。

一通り話を終えると、少し遠くを見つめるように、

「本当にいろんな事があったよ…
 
 2年前には家内にも先立たれてな。
 ワシらには子供がおらんのでな、
 今は犬と二人で寂しい老後生活だよ… 」


それまで、おじさんの話に相づちを打っていた少年は、
タイミングを見計らって、姿勢を直し、思い切って
おじさんに言ってみました。

「あ、あのー、ボクたち今、本当に一生懸命バンドの練習を
 しているんです。もしよろしければ、今後はきちっと時間を
 決めてあの倉庫を使いますので、昼間や夕方に練習を
 させていただけないでしょうか?」

岡本君も武田君も

「どうか、よろしくお願いします!」

と、頭をさげました。

すると、おじさんはハッと我にかえった感じになり、首に巻いた
タオルで顔を拭うと、

「そうか…
 まあ、これからは周り近所のことも考えて、
 なるべく夜は練習を控えるようにしなさい」

と言ってくれました。

少年は

「わかりました、きっと約束は守ります」

そして2人も

「ありがとうございます!」

と声をあげました。


おそらく、周りからは偏屈なじいさんと思われているのでしょうが、
なんだかんだいって、寂しくて話し相手が欲しかったのでは
ないのかと思います。

3人はてっきり、こっぴどくお説教をされるものだと思っていたので、
少し安心したのと、少し拍子抜けした感じが入り交じっていた
感覚でした。


その後、お菓子などをご馳走になった少年たちは、
その家の玄関を出ました。

ベンは、あいかわらず岡本君に抱きついてきます。

そのうち、少年と武田君もその犬とじゃれ合い始めました。

「この犬、さっきはすっごい怖かったけどなー、よくみると
 かわいい顔してるよな」

「おい、もう、オレたちのこと吠えないでくれよ」

しばらく犬とじゃれ合った後、

すっかり自転車のところに忘れていたビールを思い出し、

「あのー、これ、お詫びの気持ちなのですが…」

と、少年が持っていくと、

「そんな気遣いはいらんよ。それにワシは日本酒しか飲まんからな」

と、あっさり断られてしましました。

帰り際、おじさんが岡本くんに言いました。

「君、またベンに会いに来てやってくれ。
 君にはとても懐いているようだからな」

「はい、わかりました。ありがとうございました」

岡本君はどうやらおじさんに気に入られたようでした。


少年は密かに『おっさんはおっさんを知る』というのは
こういうことなのか?と一人心の中でつぶやいていました。


少年たちはその後、最後の3件目の家にも挨拶に行きました。


「え?バンド??いやー、わたしよく知らないわ…」


3件目の奥さんは、どうやらあまり気にしていなかったらしく、
少年らがバンドをやっていることすら知りませんでした。(^_^;

一応、今後のこともあるので、ビール箱を半ば強引に渡して
その家をあとにしました。


結局、おそらく警察に通報をしたであろうあのおじさんはビールを
受け取らず、あまり気にしていなかった2件がビールを受け取る
といった、なんとも妙な展開となりました。

残った一箱のビールを持って、少年たちは倉庫に戻りました。


「いやぁ、岡本、おまえのお陰で、なんだかよくわかんないけど
 起死回生できたよ、最初はどうなるかと思ったけどさぁ…」

しばらく放心状態でボーっとしていた少年は、ようやく緊張から
解放されて言いました。

岡本君は、なにやら神妙な面持ちでいます。

「なんだか、あのおじさん寂しそうだったな、うん…」

「まあ、近所だしな、たまに犬に会いにいこうぜ」

「でもオレ、あのじいさん苦手だ…岡本任せた!」

武田くんは調子よく言いました。


「いやー、でも、なんとか時間さえ守れば、またここで練習できるな」

「そうだよな!そうだよ、よかったなー!」

ようやく一仕事を終えた少年たちは、お互いに硬く握手をして、
満足げにスタジオの中に入り、今後の防音対策などを話合いました。


その日、家に帰った少年は、ビールの箱を持って父親に
今日の出来事の報告を話しました。

「ふん、なんだ、うまくいったのか?
 せっかく倉庫のスペースが空くと思っていたんだがな。
 まあ、しょうがない、そのビール冷やしとけ!」

と、父親は憎まれ口を言っていました。

『ありがとう、オヤジ…』

少年は心の中で父親に感謝をすると、スタジオ破壊命令をなんとか
撤回させた充実感に、しばし浸っていました。


「よーし、これでまた、あそこでバンドの練習ができるぞ!
 あとはヴォーカルとキーボードを見つけないとな!」


その日以来3人は、スーパーなどから段ボールや、紙製のタマゴ
ケースをもらってきては、防音対策で壁の間に挟みこんだり、
タマゴケースを壁に貼り付けたりして、少しずつ
手作りで自分たちのスタジオを作りあげていきました。

メンバー探しの課題はあったものの、3人はそれ以後も時間を
決めてバンドの練習を続けていきました。




「おーい、武田ー!
 やっぱオレもさー、例の【いんたらくてぃぶ】ってところにするぜ!」

「インターアクト部だって!」


結局、軽音楽同好会を立ち上げるための人数がなかなか集まらず、
それに、顧問になってくれそうな先生も見つからなかったので、
規則である部活動申告のタイムリミットが過ぎていたこともあり、
少年はとりあえず、武田君と同じクラブに名前だけ部員として
所属をすることにしました。

「まあ、そのうち自然消滅するしな…」

どんな部活かも知らなかった少年は、軽く考えていました。


ちょうどその頃、少年のクラスでも、少年と岡本君そしてD組の武田君が
バンドをやっているというウワサがだんだんと知れ渡っていきました。


そんなある日、少年はクラスの女の子から声をかけられます。


「ねぇ、ねぇ、カミエルくん、バンドやってるってほんと?」


「え?」


ドキドキドキ…


それは、少年が入学当時からちょっと気になっていた女の子でした。

そんなに強烈に意識をしたわけではないのですが、ふと気が付くと
その子のことをボーっと見ている自分があったのでした。


少年は、動揺を気取られまいと必死に平静を装います。

「あ、ああ、ま、まあね…」(あいかわらずキョドってる(^_^; )


「カミエルくんは、ドラムをやってるの?」

「そ、そう、オレがドラム、そんでクラスの岡本っているだろ?
 あいつがギターね」

「へぇー、あの人、ギター弾くようには見えないねぇ…」

「まあね、でもギター持たすと人変わるんだ、すっげーウマイぜ!」

「あとのメンバーは?」

「あ、それとD組の武田ってヤツがベースやってんだ。まだ3人しか
 いないけど、演奏はできるから毎日練習してんだよ」

「へー、練習ってどこでやってるの?」

「ちょっとした専用スタジオがあってさー(自慢げ)
 そこでやってんだよねー」

「へー、そうなんだぁ、わたし、バンドって見たことないけど、
 なんだか楽しそうだねー?」

「ああ、めっちゃ楽しい!さいこーだよ」

「ふーん… あ、あのね、今度ね、友達と練習見に行ってもいい?」

「え?」


ドキドキドキ…


その子の突然の言葉に少年の鼓動は一層激しくなりました。


「あ、ああ、いいよ、いいよ!ぜひ見にきなよ」

「ほんとにー、よかったー。じゃあ今度いくね!場所教えてね!」

「うん、けっこう学校からも近くだからさ、すぐわかるよ」

「うれしー、ちょっと友達にも話してみるねー」

「あ、ああ…」


ドキドキドキ…


季節は5月の下旬、爽やかな春の風が吹く季節。

少年は、その場でしばらくボーっと立ちすくんでいました…


(バンド破壊命令 完)





 次回予告

なんとかスタジオ破壊命令を乗り切った少年達。

季節は春から初夏に向かっていた。

そんな少年に、クラスの女の子が声をかけてきた!


「ロックバンドをやるんだ!そして学園祭の舞台に立つんだ!

 そうすれば、女の子にもモテモテさっ!」

そんな気持ちも少しは(いやかなり)あった少年に訪れた絶好のチャンス!


果たして、オクテな少年にロマンスは訪れるのか。


 次回 「恋の大気圏突入」


お楽しみに!


君は生き延びることができるか?



よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

スタジオ破壊命令 Vol.3

(前回からの続きです)


少年にとって、あの倉庫スタジオを失うことは、自分の分身を
破壊されるような気持ちに近いものがありました。

「…わかった…やってみるよ…」

少年は決意を込めていいました。


「ふん、まあオレとしては、倉庫のスペースが空く分、
 うまくいかないほうが助かるがな、ははは…」

「あ、でもさぁオヤジ、なんでまたビールなんだ?
菓子折だっていいじゃんか」

「それはなぁ、オレがビールだったら嬉しいからだよ。
 それに、こんなもんいるか!って突き返された時に
 ムダにならなくてすむだろーが、ははは…」

「なんだよ…そういうことかよ…」

でも少年は、素直に自分の気持ちを伝えることの下手な
江戸っ子ジジイ系な父親のことはよくわかっていたので、
口の悪さのその奥に隠れた優しさに感謝をしました。



『よーし、ぜったいあの倉庫スタジオを守らなきゃ!
 あそこを壊されたら、今後バンド活動ができなく
 なっちまうもんな…』



そしてその翌日、少年は放課後、武田君と岡本君の
2人に話をしました。

「なあ、せっかくオレらバンドを組んで、さらに自分たちの
 楽器で演奏ができる恵まれた場所を持ってる。
 このまま、あそこで練習できれば、バンドとしてもかなり
 レベルアップができるし、他のヤツらに比べてもめっちゃ
 有利な立場にたてるよな。
 それで、今日これから苦情がでた家に挨拶に行こうと
 思うんだ。だからさ、2人にも付き合って欲しいんだよ」

すると、武田君が

「なに、直接その家までいくのか?うーん、緊張するなぁ。
 そんで、もしダメだったらどうなるんだ?」

「もし、その人たちが承諾してくれなかったら、オヤジも
 あのプレハブを取り壊すって言ってるんだよな」

「マジで!そうなのかぁ、オレ達のスタジオが破壊されるのか…」

「岡本はどう?おまえも一緒に行ってくれるか?」

「そうだな、うん。オレも自分のアンプを使って音を出せて
 嬉しかったしな、あそこはなんか自分たちのスタジオって
 感じでな、愛着もあるからな、うん」

「まあ、ダメもとで、当たって砕けてみるかー」

「そうだな、ダメだったらそん時はそん時で、また考えようぜ!」


3人は決意を固め、さっそくその足で、少年の家の近くの
酒屋まで行きました。

そこで缶ビール1ダースを3箱買い、それぞれが1箱ずつ、
自転車の荷台の上に置き倉庫近くの民家に向かいました。


「でもさ、おまえのオヤジさんにも悪いことしたよな、
 わざわざビール代まで出してもらっちゃってさ、
 しかしそれにしても、なんでまたビールなんだ?」

「ま、まあ、それは聞かないでくれよ(^_^;)」



そして、いよいよ少年たちは、3件の民家が連なる場所まで
やってきました。

そして、まず最初は倉庫から最も近い場所にある家に向い、
缶ビールの箱を抱えて玄関の前に立ちました。

少年は少し震えながら、その家のインターホンを押します。


 ピンポーン・ピンポーン・ピンポーン


音が3回繰り返し鳴り、その家の人の声がインターホン越しに
聞こえてきました。


「はい、どちらさま?」


3人の少年たちに緊張が走りました!

「あ、あ、あのー、わたくしカミエルと申します…」

「はい?」

「あ、すいません、あの、ボク、この近くの倉庫でバンドを
 やっている者ですが、あの、今回は日頃ご迷惑を
 おかけしていると思い、ご、ごあいさつにまいりました」

「ああ、そうなの?ちょっとお待ち下さい…」


しばらくすると、40代くらいの女性が玄関から出てきました。

「あら、あら、まあ、どうしたのかしら?」

この家の奥さんのようです。

「あ、あのう、ボクたちこの近くの倉庫でバンドの練習をしている
 のですが、最近連日のように夜遅くまで練習をしてしまって、
 近所の方にご迷惑をかけたと思いまして…そ、その…」

「ああ、あの音ねぇ」

「そ、それで、あのー、このたびは、ご近所の皆さんに
 謝りにきたのですが…」

「あら、そうなの、そう、君たちだったのねぇ…」

「は、はい、どうもすみませんでした…」

3人は、一緒に頭をさげました。

「まあ、まあ、わざわざどうもねぇ、別に私はそんなに
 気にしてないから、大丈夫よ。
 でも、お隣さんにはちゃんと言っておいたほうがいいわよ。
 (小声で)ちょっと、うるさい方だから…」

「は、はい、ありがとうございます。あの、これからは時間を決めて
 夜の7時までには練習を終わらせますので、どうかよろしく
 ご理解をお願いします」

「はいはい、がんばってくださいな」

「あのー、これ、つまらないものですが…」

少年は買ってきたビールを差し出しました。

「あら、あら、いいわよー別に気を使わなくても」

「いえ、私の父からきちんとお渡しするようにと言われて
 おりますので、どうぞお受け取り下さい」

「そう、うーん、じゃあ、お言葉に甘えて頂戴するわね」

「なるべく音量には気をつけますので、よろしくお願いします」

そういって、3人は一件目を立ち去りました。



「おおー、緊張したー、でもカミエル、なかなかいい感じだったぜ」

「まずは優しいおばさんでよかったな、うん」

「うーん、でも今の話だと、どうやらこの隣りの人が通報したっぽい
 感じがするよなぁ、よーし、次はちょっと気を引き締めていくぞ」

「おう」


そういって3人は、おそらく苦情をいったであろうその家に向かいました。

そして、玄関先まで近づいた時…


「ウウゥ〜、ワン!ワン!」


と、その家の飼い犬が門構えの向こうから少年たちを威嚇しました。


「うおっ、びっくりしたぁー」


3人はビクっと一瞬怯みました。


「ワンワン!ワンワン!」

大型のコリー犬が、少年たちを吠え続けます。



「げっ!おい、この家インターホンがないぞ!」

「え?なんだって!マジかよ」

「あ、あれ、あそこにあるのがそうじゃないか?」

みると、門構えではなく、玄関のすぐ隣りにチャイム式の
ボタンらしきものがありました。


「おい、おい、この犬、放し飼いになってるぜ!
 これじゃ、あそこまで行けないよ」

「それにしても、こえーなー、この犬」


少年たちが、その場でドギマギしていると、しばらくして犬の声に
気が付いたのか、その家の人が玄関から出てきました。

「こらぁー、ベン!うるさいぞー!」

犬を叱りつけたその人は、見た目60代くらいの白髪のおじさんでした。


「あ、あのー、ごめんくださーい」

少年が叫びました。


その声に気づいたおじさんが、こちらを睨みました。

「うん?なんじゃぁ、おまえらは」

そういって、おじさんは少年たちに近づいてきました。


 『げっ、気難しそうなおじさんだぞー』

少年に緊張が走ります。


「こ、こんにちは、ボクたち近くの倉庫でバンドをやっている者ですが…
 あの…ご迷惑をおかけしましてすみません」


「うん?なんじゃ、あのうるさい音はおまえらか?
 夜遅くまで、ガンガンうるさくしよってからに!」


「ど、どうもすみませんでした」

3人は、一斉に頭をさげました。


おじさんは、門構えの鉄製の扉を開け、外までやってきました。


「ふんっ、まったく迷惑にもほどがあるわい。
 いったいなんだあれは?楽器の音か?」

「は、はい、そうです。あの、ボクたちバンドをやっていまして、
 あそこで練習をしているのですが…」


「バンドだぁ?ふん、くだらん。あんなもん、音楽とは言えんぞ!
 人の迷惑というもんをおまえらはわからんのか!!」」

おじさんはえらい剣幕で怒鳴りました。



「ど、どうも、すみませんでした…」


少年は、どうしたらいいのかわからず、そのまま黙ってしましました。

他の2人も、下を向いたままじっとしています。

 『やばい、この人すっげー頑固そうだぞ…』

ものすごい険悪なムードが、少年たちを襲いました。




するとその時、さっきまで吠えていたでっかいコリー犬が、
スルスルと岡本君のそばまで寄ってきました。

岡本君は、頭を下げたままちょっと困惑しながらも、
その犬の頭を撫でました。

なんと、その犬は岡本君に頭を触られても吠えません。

それどころか、そのうち犬が岡本君をペロペロと舐めはじめました。


「か、かわいい犬ですねぇ(^_^;」


しまいにはその犬が、がばーっと岡本君に抱きついてきます。

「ははは、すごいな、よしよし、うん」

岡本君がこんなにも犬に好かれるとは思いもしませんでした。


すると…

「ほう、ベンが懐くとはな、おまえ、犬は好きか?」

さっきまで、怒っていたおじさんが急に優しい口調に変わりました。

「は、はい、うちも犬を飼っていまして…犬は大好きなんです」

「ふーん、そうか…どんな犬だ?」

「はい、私もこれくらいのおおきな犬が欲しいと思っておりますが、
 なにぶん、家が狭いもので、小型の柴犬を飼っております」

岡本君特有の年上の人と話す時のしゃべり方です。

「ほう、柴犬か、ワシも以前は飼っていたよ、あれは頭がいい。
 こいつはもう3匹めになるな」


なにやら、2人が犬話で盛り上がっています。


「そうか…ふーん…」

おじさんは、少年たちをジッーっと見ています。

そしていきなり、

「…よし、おまえたち、ちょっと中に入りなさい」

おじさんは、急に少年らに家に入るようにいいました。


「は、はぁ…」

少年はなにがなんだかわかりません。


家に入ると、床の間のある畳の部屋に通され、そこに座るように
言われました。


「ちょっと、ここで待っていなさい」

おじさんはそう言うと、奥の部屋にいってしましました。



少年たちは小声で

「おいおい、いったいどうなってんだ?」

「しらねーよ、なんか説教でもされんのかな…」

と、少年たちは不安と戸惑いを隠せませんでした。


(次回につづく…)



よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

スタジオ破壊命令 Vol.2

『認めたくないものだな、若さゆえの過ちというものを…』(^_^;

(前回からの続きです)


「け、警察じゃん…」


武田君は目をそらしながら、小さくつぶやきました。

「な、なんだよ、何しにきたんだろ…」(小声)

3人は少しキョドりながら、何事もなかったかのように、
ソロソロと倉庫の中に入っていこうとしました。


と、その時です。

「君たち、ちょっとまって!」


その瞬間、3人の動きが止まります。

『…ドクン…ドクン…ドクン…』

少年達は、何も言わずその場に立ちすくみました。


2人の警官のうち、年を取った方(階級が上ね)が
少年に話しかけてきました。

「あー、あのねぇ、ちょっと聞きたいことがあるんでね。
 話を聞いてもいいかな?」

「は、はぁ」

少年は、タバコを隠した靴下を気取られまいと、
少しぎこちない足取りで警官の方へと近づいていきました。

武田君と岡本君はその場で固まっています(笑)


「あのー、なんでしょうか?」

少年は、なぜ自分たちが声をかけられたのか、その理由が
はっきりとわからなかったので、かなり緊張していました。

「ここの倉庫を管理してるのは、どなたかわかる?」

『え?』

少年は、なにを言われているのか理解ができませんでした。

「あ、あの、ボクの父が使っている倉庫なんですが…」

「あ、そうなの?ふーん…」

2人の警官は、独特?の目線で少年や周囲を観察しています。


「ところで、君たち、こんなところでなにしてるの?」


「え?あ、あの、バンドの練習を…」

「バンドの練習?バンドって楽器使ってやるやつかい?」

「はい、そ、そうです…」


2人の警官は顔を見合わせて、なにやら頷いています。

「そうかぁ、うーん…」


 『おいおい、いったい何なんだよ、わけわかんないよ』

少年は何が起こっているのさっぱりかわかりません。


「あー、あのねぇ、ちょっとそのバンドやってるっていう場所を
 見せてもらってもいいかな?」

「あ、は、はい…」

なにを言わんとしているのか解らないながらも、、
少年は、警官の言う通りにするしかありませんでした。


警官たちは倉庫の中に入り、プレハブ状のスタジオの中を
のぞき込みました。

「ほぉー、これはすごいなー、本格的だー、なあ?」

「ええ、すごいですね」

 『あ、初めて若い方の警官が声を出したぞ』


「ここ、君のお父さんが作ってくれたのかい?」

「あ、ええ、まあ…」

「ふーん、そうですか…なるほどぉ…」


しびれをきらした少年は、思いきって警官に質問しました。

「あ、あのー、なにかあったんでしょうか?」

すると警官のおじさんは、

「ああ、ごめんねぇ、あのー、実はねぇ、
 この近くに住んでいる人からね、最近ガンガンと
 音楽の音が響いてうるさくて困っているっていう
 苦情届けがあったんでね、調べにきたんですよ」

「ええ!く、苦情ですか?」

「そうなんですよ、うーん、どうやらこれを見ると、
 君たちが原因みたいだねぇ
 これ、音出すとけっこうな音がでるんでしょ?」

「ええ、まあ…」

少年は、ようやく警官たちがやってきた理由がわかりました。


「あのー、苦情って、どこから言われたんでしょうか?」

「いやぁ、詳しくはちょっと教えるのもなんなんでね、
 まあ、この辺の近くの民家だということしか言えないねぇ」

「そ、そうですか…」

「うーん、まあ、見たところ、なかなか本格的だしね、
 君たちも真面目にやっているんだろうけれどもねぇ、
 我々も通報があったからには調べないといけない
 もんでね、すまないねぇ」


「そ、それで…あの…
 これからボクらはどうしたらいいんでしょうか?」

「うーん、この辺は我々もなかなか介入しにくい
 問題でね、まあ、君たちがこのままバンドの練習を
 やめてくれれば、なにも問題はないんだけど、
 うーん、どうなんだろうねぇ」

「え?バンドの練習がもうここで出来ないってことですか?」

「いや、そういうわけじゃなくてね、あくまで騒音が問題なんで、
 なにか対策をたてるとか、双方で話し合いをしてもらうとか、
 そういうことしか我々は言えないんだけどもねぇ」

 『マジかよ…せっかくバンドができたっていうのに…
  ここが使えなくなるってことかよー』

「まあ、一応君の名前を教えてもらってもいいかな?」

「あ、カミエルです」

「ああ、じゃあカミエルさんね、今日のところはこれで帰るけどね、
 継続して通報がくるようだと、トラブルに進展することもあるから
 とりあえず、注意ということでね、先方には伝えておくけど。
 まあでもね、私は個人的にはこういうのはいいと思うよ。
 音楽っていうのはいいもんだ、加山雄三なんていいよなぁ
 君、エレキの若大将って知ってるか?」

「え?い、いや知りません…」

「そうかぁ、君たちの世代じゃもう知らないかぁ。
 ははは・・・」

警官のおじさんはそう言って、バイクに乗り込みました。

「あ、あのー、すいません!
 もし、よろしければ、苦情を言ってきた人の名前を
 教えてくれませんか?」

少年はとっさに聞きました。

「うん?それを聞いてどうするの?」

「いや、あの、その人に謝りに行きたいんです…」

「うーん、そう?まあ名前は敢えて教えないけどね、
 ほら、あそこの家のどこかの人だよ」

警官のおじさんは、遠くの民家を指さしました。

その周辺は、倉庫街ということもあって、昼間は狭い道路にも
かかわらず、大型トラックの往来が激しいところでしたので、
かなり騒音がうるさいところでもありました。

しかし、夜になると急に辺りが静かになるのですが、ここ最近
バンド結成で有頂天になっていた少年達は、調子にのって
放課後から夜遅くにかけてバンドの練習に夢中になっていました。

なんといっても、あの巨大なギターアンプが、とにかくものすごい
轟音を上げていたし、それにドラムとベースが加われば、
静まりかえった周辺にはかなりの音が響きわたっていたと思います。

実際、距離はかなり離れてはいたものの、近くに3件ほどの民家
がありました。

おそらくは、その家の人が演奏の音があまりにもうるさいので、
たまらず警察に通報したのでしょう。


「私も昔はよくフォークソングを聴いたもんだよ。
 カミエル君、まぁ、青春だ。
 まわりの人に迷惑をかけない程度にがんばりなさいよ」

そう言うと、2人の警官はバイクに乗って行ってしまいました。


少年は警官のバイクが見えなくなるまで、呆然と
その場に立ちつくしていました。


後ろからソーッと近づいてきた武田君は、

「いった?」

と、少年に声をかけてきました。

「ああ、もう見えない、大丈夫だよ」

と言っている少年の足はガクガクと震えていました。


「ふあー、すっげーあせったなー!」

たまらず武田君が叫びました。

「ああ、マジでタバコ見つかるんじゃないかと緊張したよ。
 最初はなんで警官が来たのかわかんなかったからなー
 でも、なんか警察見ると悪いコトしてなくてもキョドっちゃうよな」

「でもさ、おまえよくあの距離から、警官だってわかったな?
 もしかしてニュータイプか?」

「ははは…まあ、オレさ、視力だけはいいからなー。
 それに経験則上、ああいう時は必ず所持品検査
 されるんだよ。制服のポケットなんかに入れてたら
 まずアウトだからな。
 でも、今回のはちょっと理由が違ってたから、大丈夫
 だったけどね」


一人、倉庫の奥で様子を伺っていた岡本君が、ようやく
外までやってきました。

「おいおい、なんだ、なんだ、びっくりしたなー、もう。
 てっきりおまえたちがタバコ吸ってるのが見つかったのかと
 おもったぞー、うん」

「ははは…おっさん、なにビビってんだよ!警察くらいでさー」

そういう少年が一番ビビってました(笑)


しばらくして落ち着きを取り戻した武田君が、

「うーん、でも新たな問題が出てきちまったよなぁ…
 苦情を言われたとなると、ここがもう使えなくなる
 可能性もあるってことだろ?」

「うーん、そうだよな、せっかくバンドとしていい感じで
 固まってきたのになぁ」

その時代、少年の周辺にはバンドを練習するための
貸しスタジオのようなものがなく、この倉庫が使えなくなると
実質バンドの練習が不可能になる状況だったのです。

「まあ、今日のところはさ、とりあえず切り上げにして、
 明日からまた今後の対策を考えていこうぜ。
 今日はさすがにもう音出せないからな」

そう言って、その日はそれぞれが家路につきました。

ギターとベースを肩にかけ、自転車に乗って帰る2人の
後ろ姿を、少年はしばらく見つめていました。


『せっかくあいつらとバンドが組めたんだ。
 こんなことで終わってたまるものか!』

しかし、そうは思ってみたものの、少年の心は不安で一杯でした。

『うーん、でも、どうしたらいいんだよ…』


家に帰ると、少し落ち込んだ顔で夕ご飯を食べた後、

少年は父親に話しかけました。


「お、オヤジ、あのさ…」

少年は、今日起こったことを父親に話しました。

しばらく、だまって聞いていた父親は、話が終わった後に

「まあ、そろそろくるところだとは思っていたよ…」

と、まるでわかっていたかのように言いました。

「え?なんで?」

「ばーか、あれだけうるさけりゃぁな、誰だって文句いうわい!」

「そ、そうだよな…、かなり響いていたもんな…」

「ドラム叩くくらいならまだしも、なんじゃあのギターの音は!」

「え?オヤジ、聴いてたのか?」

「ったりめえだ!オレがなにも知らないとでも思ってんのか。
 あの音はなぁ、すごい遠くまで聞こえてるんだぞ」

「や、やっぱり?」

「ふん、まあオレは音楽の事はよくわからんしな、おまえが
 夢中になってやるもんにとやかく言うつもりはないが、
 あの倉庫を管理している者としての責任もあるからな」

「う、うん…」

「最悪、あそこは使えんようになるかもしれんぞ」

そう言うと、父親はそのまま沈黙をしてしまいました。

「ま、マジかよ…」

少年もそれ以上、なにも言えなくなってしまい、
なんとも重たい空気が流れていきました…


すると、しばらくして父親はおもむろに自分の財布を取り出し、
その中から一万円札を出しました。

そして、それを少年に差し出して、

「ふん、まあ最後にチャンスをやろう。
 これでな、明日酒屋でビールの1ダース箱を件数分買え、
 そしてそれを持って、苦情の出た家に挨拶に行ってこい」

「え?挨拶に?」

「そうだ、そこでおまえらがどうしても音楽をやりたいってことを
 その家の人に説明しろ、おまえらの情熱がどれくらいのものか、
 そして練習する時間をきっちり決めてやるってことを話すんだ。
 まあ、あとはどうでるかはその家の人次第だがな…」

「う、うん、わかった」

「それでダメだった時は、潔くあきらめろ!
 あそこも、もう使えんようにするぞ。
 あのプレハブも実は場所を取ってしょうがないからなー、
 その時はプレハブごと取り壊しちまうからな!」


当時の少年にとって、あの倉庫スタジオを失うことは、
自分の分身を破壊されるような気持ちに近いものがありました。


「う、うん…わかった…やってみるよ…」


少年は、スタジオ破壊命令をなんとか撤回するべく、
翌日の作戦を考えていました。


(次回へつづく…)



よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

スタジオ破壊命令 Vol.1

高校に入ってから、バンドのメンバー探しに
躍起になっていたカミエル少年は、
ようやくギターとベースという、バンドの核となる
メンバーと巡り会うことができました。

そう、武田くんと岡本くんです。(^_^)v

しかも、3人ともロック大好き人間で、いずれも
小・中学生の頃から楽器と親しんでいた強者
ぞろいということもあって、高校1年生にしては
当時、なかなかのレベルだったといえるでしょう。


ちょうど、少年が高校に入学して、約1ヶ月あまりの時が
経っていた頃でした。


少年は毎日のように、武田、岡本2人と共に
放課後はそのままあの倉庫スタジオに向い、
連日バンドの練習に励んでいました。


その日も、放課後は3人で倉庫スタジオに向かう予定
だったので、同じクラスの少年と岡本君はD組の
武田君を教室で待っていました。


するとその時、担任の青山先生が少年達に近づいてきました。


「おい、カミエル。
 おまえクラブ活動はどこに入ることにしたんだ?」

「え?…く、クラブですか?」

「そうだよ、入学一ヶ月の間でどこのクラブに入るか決めろ
 と言っておいただろう、どこにしたんだ?」

「あ、えーと、まだ…決めてないっす」

「あぁ!決めてないだぁー。どうすんだおまえ、
 もう申請出さないといけない時期だろうが!」

「は、はぁ…」

「おまえ、まさかまだバンドなんてくだらんものを
 やろうとしてるんじゃないだろうな?
 とにかく規則でそう決まっているんだから、
 ちゃんと今週中に所属するクラブを決めるんだぞ!」

「わ、わかりました…」


「岡本。おまえはどこに入るんだ?」

先生は隣りにいた岡本君にも聞きました。

すると岡本君は

「えー、あの、私は囲碁・将棋部に申請をしております」


 『な、なにー、おまえ囲碁・将棋部だったんかぁー』

少年はおっさん顔の岡本君をまじまじとみました。


「おお、そうか、よし。おまえはもう決まったんだな。
 ほら、カミエル。みんなちゃんと決めているんだから
 おまえも早くどこかに決めろよ!」


そう言って、先生は行ってしまいました。


少年は岡本君に

「おいおい、おまえ囲碁将棋部って言ったよな。
 マジで囲碁将棋部に入ったのか?
 っていうか、あいかわらずおっさんくせーな」

「おっさんくさいとはなんだ!おっさんくさいとは!
 囲碁の奥深さを知らんヤツに人生の奥深さが
 わかるわけないんだぞ!」

「じ、人生ですか…
 というか、将棋じゃなくて囲碁なんだ…」

「うん、そう、そう、まあ将棋も面白いけどね。
 やっぱり今は囲碁だなー、うん。
 それにな、囲碁や将棋は頭の体操になるぞ。
 おまえもやってみたらいいよ、囲碁。
 そうだ、一緒にやるか?
 教えてやってもいいぞ」

「い、いやオレは遠慮しとくわ…はは…。
(どうでもいいけど、その説教くさい言い方やめろよ)
 ま、まあ、でもさ、オレたちはバンド活動がメインだろ?
 部活はさらっと流すくらいにしておいてくれよな」

「まあオレはね、一応、名前だけ部員だな、うん。
 この高校はそういう規則みたいだから、ちょこっと
 顔出して、すぐに帰ろうとは思ってるんだな、うん。
 そこらへんは、うまくやるのが大人の男ってもんだ」

「は、はぁ、大人の男…ですか…
 (っていうか、おまえは大人というよりおっさんだけどな)

 あ!でも名前だけ部員っていうのはなかなかいいな。
 そっか、なるほどな。一応名前だけ登録して、しばらく
 経ったら幽霊部員になって、最後はフェードアウト
 作戦っていうのもいい考えだよなー」

「いや、オレはそこまでは考えてないぞ、うん。
 もともと囲碁は好きだからな、うん。
 ちゃんと続けるつもりだぞ」

「え?そ、そうなの?
 まあ、でもバンドに差し支えない程度にやってくれよな」

「そういうおまえはどうするんだ?うん。
 とりあえずどこかに所属してないとマズイんじゃないのか?
 それにさっき先生にバンドがどうのこうのと言われていたけど、
 おまえ何かやらかしたのか?」

「ああ、まあ、以前ちょっとな…、ある意味オレ、担任に
 目を付けられてるかもしれないんだよなぁ。
 あーあ、でもクラブどうすっかなー、めんどくせーな。
 バンドだけやっていればそれでいいんだけどな」


その時、D組の武田君が現れました。

「やー、おまたせー」

そこですかさず少年は、

「お、そうだ!武田ー。おまえってクラブ活動どうすんだよ?」

「え?クラブ?ああ、あれねー。
 オレはさ、一応インターアクト部ってとこに決めたぜ」

「は?なんじゃそれ?【いんたーあくと部】ってなに?」

「いやー、オレも何やるんだか知らねーんだけどさ。
 うーん、いわゆるボランティア活動みたいな系らしいぜ」

「おいおい、武田、おまえってそーいうの好きなのか?」

「いやぁ、そんなわけじゃないんだけどさ、なんかネーミングで
 決めたっていうのかなー、なんだかカッコイイじゃんか(笑)
 まあ、どうせ名前だけ部員なんだからさ、
 オレとしてはどこでもいいんだけどな…
 でも本当はさ、軽音楽部みたいなものがあれば、
 学校で堂々とバンド活動ができるのになー」

 あぁ、ここにもいました、名前だけ部員!

「あ、でも軽音楽部っていうのはいい考えだな!
 おおー、そうだよ、自分達で軽音つくるっていうのはどうかな?
 あ、でもこの高校、バンド活動自体が禁止って言ってたっけ…」

「ええー!そうなのか、カミエル?」

「うん、やっぱりおまえも知らなかった?
 校則にそう書いてあるらしいぜ。
 オレ、前にスネアを学校に持ってきたことがあってさ、
 それ叩いてるところを見つかったら、危うく没収されそうに
 なったんだぜ」

「え、そうなのか?じゃあ楽器もってくるのも危険じゃないか」

「そうなんだよ、だから堂々と楽器を持ってくるためには、
 クラブ活動かなにかの大義名分がないと難しいんだよな」

「マジかよ…ってことは文化祭のようなイベントでもバンドは
 出れないってことなのか?」

「うーん、オレが聞いた限りでは、ここの先生方はほとんどが
 バンド否定派みたいなんだよ。
 今まで、バンドが文化祭やイベントなんかに出たことは
 ないって言ってたよ」

「おいおい、ウソだろ…他の高校なんかは文化祭でバンドなんて
 あたりまえにやってるって言ってるぜ!」

「だからさ、そのためにも母体としての軽音楽部が
 必要なんじゃないのか?」

「なになに?なかなか、この高校は厳しいみたいだな、うん。
 たしかに軽音学部でもつくらないと、バンドで文化祭の
 ステージに上がるのは難しいそうだな、うん」

「そうだよな、よーし、いっちょう軽音立ち上げてみようか!」

「そのためには、最低でも部員が10名以上必要じゃないか?」

「あぁ、そっかー。そんじゃあまず、同好会だ、同好会をつくろうぜ。
 同好会なら5、6人くらいいればできるだろ?
 ちょうど、ヴォーカルとキーボードを入れれば
 バッチリ5人じゃん。っていうか、オレ達のバンドをそのまま軽音に
 しちゃえばいいじゃんか!」

「おおー、そうだな、そうすりゃ堂々と学校でバンドができるぜ!」

「よーし、決まりだ、さっそく明日から新しい同好会つくるための
 準備を始めようぜ、そのためにはあとヴォーカルとキーボード
 を探さないとな!」


その日、3人は軽音楽同好会設立への意欲を固め、
そのまま倉庫スタジオに向かいました。


倉庫スタジオで、さっそく3人は演奏を開始して、
お互いノリノリにはしゃいでいました。

演奏を重ねることで、だんだん3人の息も合ってきました。

さらに巨大なギターアンプから出てくる轟音は、否応なしに
少年達を熱くさせたのです。

その轟音に対抗するかのように、少年のドラムも武田君のベースも
より一層力が入ります。


「おおー、最高だぜ、ロックさいこー!」



演奏が一段落して、カミエルと武田君はスタジオの外に出て、
軽く一服(笑)をしていました。


「あぁ、演奏あとのタバコはうめーなー」

「いやー、やっぱりロッカーは酒とタバコにまみれないとな(笑)」


そうです、当時ロックミュージシャンに憧れていた少年達は
ご多分にもれず、なんでも彼らのマネをしていました。
髪の毛も順調に長くなっています(笑)


少年と武田君は、すでに中学生の頃から喫煙癖が始まって
いたのでした (^_^;


それを見ていた岡本君は

「おいおい、おいおい!高校生がタバコなんか吸っちゃいかんぞ!
 タバコは体に悪いんだからな、う〜ん」

と、2人に説教をしています。

「なんだよー、おまえだって酒は飲むっていってただろう。
 酒だって二十歳越えなきゃダメなんだぜ」

と、2人からツッコまれて、

「いや、酒はいいんだよ、うん。少量なら健康にもいいんだよ。
 【酒は百薬の長】ってな、うん。
 あ、でも飲み過ぎはいかんぞ、悪酔いするからな。
 こうなると逆に【きちがい水】になるからな、うん」

と、わけのわからない言い訳をしています。

「なんじゃそれ、わけわかんねー、ははは…」


3人は演奏後の心地よい疲れを感じながら、
しばらくの間、話をしていました。





…と、その時です。


なにやら、遠くの方から2台のオートバイが近づいてきました。



ピロリロリーーン(額から光りがでた音)


中学生の時から鍛え上げられた百戦錬磨のセンサー(笑)が、
少年に危険信号を知らせました!

 「ララァ…」

 ・・・じゃなかった(^_^;


「や、やばい!武田、タバコ消せ!」

「え?え?な、なんだよ」

「いいから、はやくタバコこっちに貸して!」

少年は急いで武田君から火のついたタバコを受け取ると、
すぐにそれをコンクリートの床でもみ消し、2人が持っていた
タバコの箱をさりげなく、自分の背中の方にもっていき、
そのまましゃがんで両足の靴下の中に隠しました。

 (これぞ、百戦錬磨の技!)


ブロロローー、キィーッ。

2台のバイクはちょうど少年達がいる倉庫の前で止まりました。


降りてきた2人の男は、なにやらどこかで見たことのあるマークの
付いたヘルメットをかぶっていました。
















「け、警察じゃん…」

武田君は目をそらしながら、小さくつぶやきました。

「な、なんだよ、何しにきたんだろ…」(小声)


3人は少しキョドりながら、何事もなかったかのように、
ソロソロと倉庫の中に入っていこうとしました。




 その時です。


「君たち、ちょっとまって!」


その瞬間、3人の動きが止まります。


『・・・・・;』


少年は、まるで自分の頭にも心臓があるかのような
ドクドクと激しい鼓動を感じていました…


(次回へつづく…)




よろしければこのブログをランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる
おねがい

バンド男 大地に立つ!(後編)

 

(中編からの続きです…)


「まあ、今日のところは初合わせだからさ、とりあえず2人が
 やっているところを見て、バンドに入るかどうか決めてくれよ」

 

「うん、うん。まあ、そうだ、そうだ。どのくらいの実力なのか、
 まあ、見せてもうらおうかな、うん」


その後、武田君にも事情を話し、3人はあの倉庫内スタジオに
向かったのでした…

 

例のごとく、倉庫の中にあるこのスタジオを見て、
岡本君もさすがに驚いています。


「なんだよ、なんだよ、すごいじゃないですか?ここは、うん。
 ここなら、おれのアンプも持ち込めるんじゃないかなー、うん」


『ふっふっふ…、すっかりやる気になっているじゃんか』


そこで、少年と武田君は、ドラムとベースだけで、お互いが
知っているクイーンの曲を、何曲か合わせていきました。

 

炎のロックンロール
アンダー・プレッシャー
ウィ・ウィル・ロック・ユー
ANOTHER ONE BITES THE DUST
愛という名の欲望

 

水を得た魚のように、次々と演奏していく2人

 

なんと!

2人は初めてとは思えないほどの、
ピッタリと息の合った演奏をしたのでした。

 

武田君が、横浜銀蝿のツッパリハイスクールロックンロールの
ベースラインを弾き始めたので、こちらもそれにドラムを合わせると
なんだか、妙ーに盛り上がりました。(笑)

 

でも、何度も言うけど、あんたビジュアル違いますから!


しかしながら、一人でドラムを叩いていたボクには、たとえベース
と合わせるだけでも、とてもとても幸せな気持ちになりました。

 

武田君はベースを始めたばかりなので、多少荒削りなところは
あるものの、リズム感がしっかりしていて、練習していけば、
かなり上手くなることを予見させる才能の片鱗をみせていました。


2人の演奏を見ていた岡本君は、なにやらソワソワしています。

 

一通り、演奏が終わった後、2人はグッと握手をして、

 

「いいじゃん、いいじゃん、オレら、バッチリやっていけそうだな!」

と堅く手を握り合いました。


そこで、少年は岡本君に

 

「岡本、ギター弾いてるおまえから見て、オレらどうだった?
 オレらと一緒にやってくれる気はあるかい?」

 

すると、岡本君は、

 

「うん、まあ、なかなか良かったよ、うん。まだまだ荒削りだけど
 まあ、オレが入ってもいいんじゃないかな、うん」


『まったく、おまえはホントに50過ぎたおっさんか!
 素直に入りたいって言えばいいのにさー』


その時、武田君がすかさず

 

「あのさ、ごちゃごちゃ言っているより、一緒に演奏してみるのが
 一番早いんじゃないかな。君も明日ギター持ってきなよ。
 あ、でもギターをならすアンプがないな…」

 

すると岡本君は、

 

「うん、おれさ、実はグヤトーンの巨大な真空管アンプを
 持っているんだけど、ワゴン車のような車じゃないと、
 とてもじゃないけどあれは運べないと思うんだよな」

 

「ワゴン車ー?そんなに巨大なの持ってんの?
 …っていうか、もう運ぶ気満々じゃん!」

 

「ああ、重ねると、おれの首くらいまであるよ。うん」

 

「げっ、それじゃ、自転車で運ぶわけにはいかないな、
 ワゴン車かトラックじゃないと無理だよな」
 
「それにうち借家でさ、自宅じゃうるさいから、ほとんど本来の
 ボリュームで音を出したことないんだよね、うん。
 いつも真空管暖めるだけで終わってるんで、宝の持ち腐れ
 なんだよね、うん」

 

「せっかくのアンプが音出せないんじゃ、かわいそうだな。
 うーん、そういうことなら、オレの親父が仕事用のワゴン車を
 持っているから頼んでみようか?
 そのアンプ、ここに持ってきていいのか?」

 

「いや、うん、まあ、実はね、オレも高校入ったら本格的に
 バンドやりたくてさ、ギターとアンプを揃えたわけなんだよ。
 でもちょっと、あまりにも大きいのを買ってしまったんで、
 正直、家でも収まりが悪くてさ、もうちょっと小さいものを
 買おうかと思っていたんだよ。うん。
 まあだから、ここで鳴らせるんなら、そっちのほうがいいよな」

 

「よし、おまえがそういうなら決まりだ、オレ親父に頼んでみる
 からさ、おまえの家まで取りに行ってもいいぜ」

 

「うん、そうね、うん、それでいいよ、そのほうがアンプも喜ぶと
 思うんだよ、うん。
 あ、でも確認しておきたいけど、おれがやりたいのは
 ハードロックだよ、いいの?それで?」

 

「ふっふっふ…それはこっちも望むところなんだ。
 まあ最初はいろんなロックバンドのコピーをやっていこうぜ、
 そのうちオリジナル曲なんかもつくったりしてさ…
 武田もそれでいいかな?」

 

「ああ、オレはハードロックでもなんでもいいぜ。
 うーん、これでここが本格的にバンドができるスタジオになるな、
 毎日放課後、部活動みたいな感じでできるもんなー」

 

「そうだよ、オレら帰宅部&バンド部だな、ははは…」

 

・・・・・・・・・・

 

ようやく少年は、なんとか最低限のバンド構成ができるメンバーを
見つけることができたのでした。


そして、その翌週に、岡本君のあの巨大なギターアンプが
とうとう少年の倉庫スタジオにやってきたのです。


3人はあらかじめ、セッションする曲を何曲か決めておきました。


MSGの「アームド・アンド・レディ」

ディープパープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」

そして、ツェッペリンの「天国への階段」

 

「ギャワォーーーン」


岡本君の出力200Wのギターアンプが、
初めて大音量を鳴らした瞬間でした!

 

思っていたよりも、ものすごい音が出るものです。
少年は初めて間近で聴く、大音量のギターサウンドに
しばし、感激をしていました。

 

岡本君のギターは、とても綺麗な虎目のレスポールです。

 

おっさん顔なので、ほんとにレスポールがよく似合います(笑)

 

岡本君は、ギターを持った瞬間、人が変わったようにギターを
弾きまくり、ちょっとしたデモンストレーションを始めました!

 

その姿は、まさにゲイリー・ムーアだった。


さて、岡本君の腕前のほどは???


「おおぉー!すげぇー!!」

 

「マジ…おまえ、本当に高校生かよ?…」

 

少年と武田君はそのテクニックに唖然としました。

あれだけ偉そうな口を叩いていただけあり、その当時にしては
自分でも見たことがないくらい、めちゃくちゃウマかったのです。

 

さすがは、小学生からギターをやっていただけはあります。

 

『いける!これならいけるぜ!』

 

少年は興奮を抑えられませんでした。

 

さっそく、3人はそれぞれの配置に付き、

ドラムのハイハットの合図で、一曲目の

「アームド・アンド・レディ」の演奏を開始しました。

 

大音量のギターが「ウォオォーン」を唸りをあげ、

 

ドラムとベースが渾身の力を込めて後に続きます…

 

ギターソロもマイケル・シェンカーを忠実にコピーした
バツグンの演奏テクニックをみせる岡本君!

 

ギターを弾く岡本君は、教室で見せる姿からは想像もつかない
ほどに、生き生きとしています。

 

一曲目の演奏が終わった後、思わず3人はそれぞれが駆け寄り、

ガシっと手を合わせました。


「すげぇ、オレら、マジでイケてるぜ!」


感動すらおぼえた少年達は、それぞれが辿ってきたバンドへの
情熱と道筋を確認するかのように、しばらく喜び合っていました。


『おおぉー、やっぱ高校に行って良かったぁー。
 こんなヤツらとバンドができるようになるなんて、
 本当に夢のようだよー』

 

少年は、込み上げる思いをおさえることが出来ませんでした。

そして、3曲目を演奏し終わった3人は、まるで歴戦を共に
戦い抜けた戦友のような、なんとも不思議な気持ちを共有
していました。

 

まさにこれこそが、音楽の醍醐味ですよね!

 

それまで、知らなかった者同士が、音楽で一つになる。

 

セッションした後は、まるで親友のように親しくなれてしまう。

 

やがて少年は、この音楽の素晴らしさが、

 

そして、音楽を通して一つになることが、

 

国籍や人種をも越えるものであることを
知ることになるのです。

 

再び、手を握り合って、3人は高々とその手を上に掲げて、

 

「よーし、正式にバンド結成宣言をしようぜ!」

 

と、声を掛け合いました。

 

おっさん顔の岡本君が、初めて見せた、少年のような、
でもひきつった笑顔がとても印象的でした(笑)

 


この瞬間、孤独なドラム少年は、バンドマンへと変身したのです。

 


 「バンド男、ついに大地に立つ!」

 

 

しかし…

彼らはまだ知るよしもありませんでした。

 

この先、大いなる試練が、

 

彼らを待ち受けていることを…


(次回へつづく…)

 





 


 次回予告(ナレーション風に)


ようやくバンドを結成できた少年は、充実した高校生活を
送っていた。

 

あとは、ヴォーカルとキーボードが見つかれば、

完全なるバンドができあがるのだ!


しかし、無惨にも少年達を襲う、数々の苦難と障害…

 

この先、少年達に未来はあるのか?

 


 次回 「バンド破壊命令」

 

  お楽しみに!

 

 

 君は生きのびることができるか?

 

 

Camiel


よろしければランキングに投票していただけませんか?
人気blogランキングをみる

バンド男 大地に立つ!(中編)

 

でんでん…

 

でででん…

 

…っシュー!☆ (って、わからない人すいません…(^_^; )


(前回の続きです…)

 

少年にはバンド結成のための、ある秘策があるのでした…


放課後、少年は約束通り、ベースの武田君を迎えに
D組まで行きました。

 

「やあ、お待たせ、そんじゃ行きますか」

 

「へ?行くってどこへ?」

 

「まあ、ちょっとオレについてきてよ」

 

「なんだよ、怪しいなぁ…」

 

「いいから、いいから」


少年はベースの武田君を連れて、学校を出ました。

 

少年の家は、通っていた高校から比較的近い場所に
ありました。

 

そして、少年の父親が当時資材置き場として使用していた
倉庫は、その帰り道の途中の様々な会社の倉庫が建ち並ぶ
倉庫街のような場所にあったのです。

 

ついてきた武田君は不思議そうに、周りをながめながら、

 

「おいおい、変なところに連れて行く気じゃないだろうな?」

 

などど、ちょっと不安な表情を浮かべています。

 

「ははは…大丈夫だよ、別にマフィアの取引に行こうってんじゃ
 ないんだからさ」

 

少年は倉庫街の一角にある、こぢんまりとした倉庫に

武田君を連れて行きました。

倉庫の鍵を開け、シャッターをガラガラっと上へ押し上げて、
建築材や金物機材などが置いてある場所を通り抜けると、
8畳間ほどのプレハブ小屋がありました。

 

少年は一呼吸おくと、わけがわからずにキョトンとしている
武田君にむかって言いました。

 


「ようこそ、我がスタジオへ!」

 


プレハブ小屋の扉を開け、部屋の電器をつけると、
奥の中央には新しいドラムセットが置かれていて、その横には
エレクトーン、その上にはシンセサイザー、オーディオは
ちょっとしたPAのようにドラムの脇に置かれています。

 

そうです、ここには少年が中学の時に、父親が作ってくれた

プレハブ状の部屋があり、少年が長い時間をかけて、

せっせとスタジオ風に作り変えてきたものがあったのです。

 


「おおぉー、マジで?マジで?なにこれー!」

 

と、武田君もさすがに驚いた様子です。

 

「まるっきり、スタジオじゃんか!どうしたのこれ?」

 

「いやぁ、中学の時にオレがバンドやりたいって言ったらさ、
 親父が作ってくれたんだよね」

 

「おまえんちって、金持ちなのか?」

 

「いやー、金持ちではないけどさ、好きなことは思いっきり
 やれっていう感じで、やらしてくれるんだよね」

 

「すげえ、いい親父さんだな!普通こんなことしてくれないぜ」

 

「うん、そうだよね。ありがたいよなぁ、ほんとに…
 だからさ、ここで思いっきりドラムの練習ができるんだ。
 それに、バンドの練習だって昼間だったらできるよ。
 練習スタジオなんて借りなくてもいいんだぜ!」

 

少年は、ちょっと自慢げに言いました。

 

「すげー、そうだよな、マジでいいよ、ここ!
 それに、ドラムセットだってまだ新しいじゃんか!
 どうしたの?これ」

 

「ああ、オレって中学の時、勉強全然やらなかったからさぁ、
 親はなんとか高校には行って欲しいと思ってたらしくてさ、
 私立に入ったらお金がかかるからダメだけど、もし公立
 の高校に入れたら、ドラムを買ってくれるように交渉したんだ。
 それで、公立に入ったんで入学祝いで買ってもらえたんだよ」

 

「なんだか、恵まれてるよな、おまえって…」

 

「まあ、ドラムセットを買ってもらうことと、高校行ってバンドやる
 事だけをモチベーションにして、勉強したからなぁ…
 
 あ、それでさ、どうかな?オレとバンドを組まないか?
 そして、メンバーを一緒に探して欲しいんだよ」

 

「ああ、やるよ、やる。おー、なんだかワクワクしてきたな!」

 

「そうだよ、バンド組んでさ、ぜったい文化祭に出ようぜ!」

 

「よーし、ぜったい出ようぜ!
 あ、そうだ、オレのベースとアンプ
 ここに持ってきてもいいか?」

 

「もちろんだよ!明日でもいいぜ、

 さっそくドラムと一緒に合わせようぜ!」


その翌日、朝早くから武田君は自宅からのかなり長い道のりを
自転車の荷台に大きなベースアンプを載せ、背中にベースを
背負ってやってきました。

 

「めちゃくちゃ、しんどかったぁー」

 

「おおー、ご苦労さん!」

 

「ちゃりんこ乗れる状態じゃなくてさー、
 結局せっせと押しながらきたんだよー」

 

「マジで!そりゃ大変だったなー」

 

少年達はその機材を、一端倉庫のスタジオの部屋の中に
しまって、その朝はそのまま高校に向かいました。

 

「いやー、楽しみだなー、はやく放課後にならないかな」

 

「学校行ってる場合じゃねーよな、ははは…」


その日は2人とも、ソワソワした時間を過ごし、
ついに、待ちに待った放課後がやってきました。

 


そしてその時、少年は、あのおっさん顔したギター侍、
岡本君に声をかけました。

 

「おっさん…あ、いや、岡本、あのさ、今日オレD組のベース
 やってるヤツと一緒にスタジオで合わせるんだけどさ、
 よかったら、おまえも一緒にこないか?」

 

すると岡本君は

 

「え?え?なに?もうベースとか見つかったわけ?
 なんだよ、なんだよ、そういうことならオレもギター
 持ってきたのに、今日?今日?やるの?」

 

と、特異の…得意のキョドリモードで言いました。


『なんだよ、こいつ、なんだかんだ言って、やる気満々じゃん』


「まあ、今日のところは初合わせだからさ、とりあえず2人が
 やっているところを見て、バンドに入るかどうか決めてくれよ」

 

「うん、うん。まあ、そうだ、そうだ。どのくらいの実力なのか、
 まあ、見せてもうらおうかな、うん」


『っていうか、ムカつくなー、その態度!
 ぜったいギャフンと言わせてやるからな…』

 


その後、武田君にも事情を話し、3人はあの倉庫内スタジオに
向かったのでした…

 

(後編につづく…)

バンド男 大地に立つ!(前編)

カミエルのドーン・コーラスをお読みいただいている皆さま!

遅ればせながら、あけましておめでとうございます!

 

今年も皆さまにとって、素晴らしい年となりますように。

 

どうぞ今年もよろしくおねがいいたします!( ^.^)( -.-)( _ _)

 

すっかり正月気分でアップが滞ってしまいました(^_^;


(さて、今年最初のバンド男でございます…)


「あ、あのさ、君はどんな音楽聴いてるの?」

少年はドキドキしながら彼に聞きました。

 

すると、彼は・・・

 

「銀蝿とか…」


「は? な、なに?」


「横浜銀蝿とか・・・」

 

え?

 

い、今なんといいました?…

 

「ヨコハマギンバエ」とおっしゃいましたか?

 

その瞬間、少年はその場で硬直して固まってしまうのを
必死でこらえていました…

 

確かに、当時は横浜銀蝿なる和製ロックンロールバンドが
一世風靡していたことはたしかではあるのですが…
うん、おいらも中学の時は流行で聴いていたけどね(^_^;

 

『なんで、横浜銀蝿なの…
 たのむ、レインボー、マイケルシェンカー、
 いや、ツェッペリン、ディープパープルでもいい
 そう言ってくれ、たのむ、そう言ってくれぇぇー
 
 …ていうか、おまえビジュアル全然ちがうじゃん!』


言葉にならない少年の心の叫びは、本田ヤスアキ似の
イケメンの彼に向かって何度もそう叫んでいました。

 

あ、ちなみに彼の名前は武田(仮名)君といいます。


…と、その時、彼がこう言いました。


「でも、オレ、高校入ったらクイーンみたいなバンド組みたいと
 思ってたんだよね」


は?

 

クイーンとおっしゃいましたか?

 

いま、クイーンとおっしゃいましたか?


少年は、彼の肩すかしともいえる言動に戸惑いながらも
その言葉を聞き逃しませんでした。


「どえー!マジで?君クイーン好きなの?」

 

「ああ、中学ん時は良く聴いてたんだよね。
 ジョン・ディーゴンのベースってなにげにカッコイイしね、
 ロジャーのドラムもイカすじゃんか」

 

「いいじゃん、いいじゃんクイーンいいじゃん!
 クイーンのベースってジョン・ディーゴンっていうんだぁ(笑)
 ロジャー・テイラー、オレもすっげー好きだよ。曲もカッコイイ
 しね、ボーカルは3オクターブの声域を持つフレディ、それに
 独特のギターサウンドのブライアンもいいよねー」

 

「うんうん、ライブ版のウィー・ウイル・ロック・ユーは最高だよ!」

 

「そうそう、あのロックンロール調にアレンジされてるヤツでしょ!
 あれ、ぜったいバンドでやりたいよねー」


少年は、クイーンつながりで、彼とはロックをやっていけそうだと
勝手に確信しました。


「あ、あのさ、さっそくだけど、今日放課後時間ある?」

 

「えー?ほんとにさっそくだなぁ、うーん、別に今日はなにも
 予定ないけど、どうして?」

 

「いや、ちょっとさ、見せたい物があるんだけど…」

 

「なんだよー、いきなりだなぁ。まあでも時間はあるから
 別にかまわないよ」

 

「よかったー!じゃあ放課後に迎えにくるからさ、またね!」


少年は込み上げる嬉しさをなんとか抑えながら教室に
戻りました。

 

そして、イケメン彼の友人であるクラスメイトに、

 

「すげー、おまえのお陰だよー、ベース見つかったよ!
 一番難しいと思っていたベースが見つかったんだよー
 ベースだぜ!ベース!しかもジョン・ディーゴンだってよー」

 

「そんなにベースってすごいのか?」

 

「すごいってもんじゃないよ!なんてったってベースだもん。
 ある意味バンドの要だぜ、ベースの渋さをわかるヤツ
 はなかなかのもんだよ、さっすが高校生は違うよー」

 

「ふーん、そうなんだぁ…
 あ、そういえばアイツ、中学の時はドラムもやってたなぁ」

 

「マジで?ギターとドラムやってて、さらにベースかぁ
 こりゃぁ、期待できそうだぜー、本田ヤスアキ君!」


すると、その友人が

 

「おまえ、そんなにバンドやりたいのかよ…
 バンドってさぁ、そんなに面白いのか?
 オレはゲーセンのほうが面白いけどな…」

 

「ほんっと、めっちゃ面白いって!みんなで曲を一緒に
 合わせた時の一体感なんてさー、鳥肌もんだぜ!
 ぜったいゲーセンより面白いよ!」

 

「ふーん、そうなのか…オレは楽器できないしな、
 あ、知ってた?うちのクラスの岡本(仮名)いるだろ、
 あいつもギターやってるっていってたぜ」


「な、なんですとー?
 おい、おい、ちょっとまて、岡本っていったら、
 あそこのおっさんズラのヤツだよな」

 

と、2人はクラスの前のほうの席に座っている岡本君を
まじまじと見ました。

 

「そうらしいよ、でもあいつ絶対そんな風に見えないよなぁ」


まさに、大正デモクラシー、
じゃなくて、灯台もと暗しー…


…すいません…(^_^;


「マジかよ、ほんとにアイツがぁ?」

 

どうみても、ギターをやっているようには見えない、
っていうか、高校生にもみえないおじさん顔の岡本君…

 

『できれば、ジェフ・ベックのような男の渋さを醸し出す
 ヤツが良かったんだけどなぁ、まあ、ゲイリー・ムーアだって
 かなりのおっさん顔だしな、っていうかおっさんだし…
 うーん、その路線もアリかもなぁ…』


と、ムリヤリに納得した少年は、その後の授業も上の空。

 

さっそく休み時間、少年は恐る恐る、その岡本君に
声をかけました。


「岡本ー、あのさ、君ギターやってるんだって?」

すると、おっさん顔の岡本君は、

 

「え?なに?なに?なんで?なんで?」

 

と、少年以上のキョドりモードになった岡本君に

 

「いや、あのさ、ほら、オレ自己紹介の時にドラムやってるって
 いってたでしょ。そんでバンドやりたいと思ってるんだけど、
 いま、メンバー探してるんだよね。
 なんか岡本がギターやってるって聞いたんだけど、
 どんな音楽やってるのかなーと思ってさ」

 

「え?なに?なに?おれとバンドやるっての?
 うーん、おれはハードロックしか聴かないよ。
 というか、ツェッペリン大好き人間だし、知ってる?
 ツェッペリン、知ってる?」

 

「えー、ツェッペリン好きなんだー、すげえ!
 オレもジョン・ボーナムはすごいドラマーだと思ってるんだ」

 

「え?え?ボンゾ知ってるの?なかなかやるね、うん。
 おれは彼が死んだ時にはね、一人でモビーディック聴きながら
 しみじみ酒を飲んだもんだよ、うん…」

 

『へ?おい、おまえ、ほんとにおっさんか!』

 

と、少年はツッこみたくなりましたが、その後すかさず岡本君が

 

「おれさ、ハンパなヤツとはバンドやりたくないんだよね。
 それなりにちゃんと出来るヤツじゃないとね、うん。
 君さ、ドラムって上手いの?
 あんまり初心者と一緒にやりたくはないんだよねぇ。
 おれは小学生の時からずっとギター弾いてるからねぇ…」

 

『なにー?なんだその自信ありげな感じはー!
 っていうか、なんかムカつくぞー、その態度!
 なんだか、ほんとにおっさんの説教みたいだぞー』

 

そして、その時から少年は岡本君を密かに「おっさん」と
呼ぶようになります。

 

しかしながら、ベースとギターをようやく見つけた少年は、
なんとかこれで最低限のバンドはできるぞという希望が
みえてきました。

 

「あのさ、今度ぜひオレにギター聴かせてよ、
 きっとジミー・ペイジみたいに弾けるんでしょ!
 すっげー聴きたいなー君のギター」

 

すると、岡本君はまんざらでもない顔をして、

 

「うーん、まあ、機会があったらねぇ、そうだ、今度ギター
 持ってきてもいいけどねぇ」

 

なんだよ、ほんとは聴かせたいんじゃないか(笑)

 

「おー、ぜひぜひ持ってきて聴かせてよ。
 あ、そうだ、楽器持ってくる時は気をつけないと
 この学校、没収されるかも知れないから気をつけてね
 オレ、いっかいスネア取られそうになったから」

 

「じゃあ、今度おれのレスポールもってくるよ」

 

「マジで?レスポール持ってるの!
 すげえ、ほんとにジミー・ペイジじゃん」

 

「ふっふっふ…わかってるね、君、うん。
 最近入学祝いで買ってもらったんだけどね。
 けっこう高かったけど」

 

「え?それって、もしかしてギブソンとか?」

 

「残念!フェンダーだけどね。さすがにギブソンは…」

 

2人はすっかりギター話で盛り上がっていました。

 


『おおー、なんだかいきなり流れがやってきたよー。
 ギターはちょっと気難しそうなおっさんだけど、あれだけ
 自信があるくらいだから、きっとかなりの使い手に違いない。
 しかも、レスポール持ってるらしいし。
 なんとか説得して、バンドに入れてみせるぞ。
 よーし、先ずはベースの本田ヤスアキ(武田)君からだ』

 

そして放課後、少年は約束通り、ベースの武田君を迎えに
D組まで行きました。

 

「やあ、お待たせ、そんじゃ行きますか」

 

「へ?行くってどこへ?」

 

「まあ、ちょっとオレについてきてよ」

 


少年にはバンド結成のための、ある秘策があるのでした。


(次回へつづく…)

聖夜に降る金色の粉雪…(2)

カミエルのドーン・コーラスをお読みいただいている皆さま!
Merry Christmas!☆⌒(*^∇゜)v です。

(昨日の続きです…)

時は9月…
ボクは、あの夏の日、星に願いをかけたことを思い出していました。
今年のクリスマスは、もしかしたら?もしかしたら?
この流れに、ボクの期待は否応なしに高まっていきました。

幸いにも?ボクは、お茶会の時に、彼女の友人の一人に、
どうやらボクが彼女に気があることを悟られてしまいました。
 
だって、彼女を見る目が違いましたらね、勘の良い女性なら
気づいてもおかしくないとは思いますが…
 
ええ、ええ、ボクは器用に隠せないんですよ、こういうの(笑)
 
なぜか、女性ってすぐわかるんですよねぇ、不思議だよなぁ。
ていうか、あんな事があったら、イヤでも意識するでしょ!
って感じですよねぇ。ねえ?
 
そこで、その友人が仲をとりもってくれて、その1ヶ月後には、
ボクは彼女に告ります(はやっ)
 
そして、一応?OKをもらってしまいました。
 
彼女は、まだこの時点では、まあ、お友達程度からはじめましょう
という感じだったそうです。
 
OH!意識のギャップありすぎ!ていうか、ボクが先走りしすぎ(爆)
 
なんだか、男ってどうしてこうなんでしょうかねぇ…あ、ボクだけ?
自分は特にですけど、後先考えないで突っ走る傾向があるんですよ。
先走りすぎて退かれるタイプですわ!(笑)
よくいるでしょこういうヤツ。恋愛のかけひきとか出来ないヤツ(^_^;
 
でも、あの時の不思議体験があったものだから、これは絶対
いけるんじゃないかぁーと自分勝手に盛り上がっていたのです。
 

それで案の定、退かれました…(笑)
 

そりゃ、そうですよね。だってそんなこと彼女知らないし、彼女の
気持ちを無視して突っ走っちゃったわけですから…トホホ…
 
たしか、11月の後半だったと思いますが、ボクはかなりヘコんで
ちょっと反省モードに入りました。
 
「そうだよなぁ、やっぱりオレの思いこみだったのかもなぁ…
 考えてみればあの声だって、単に自分の願望だったのかも知れないし、
 自分が一方的に彼女に気持ち押しつけてたんだ、悪いことしたなぁ」
 
そこで、あることがボクの脳裏をかすめます…
 
「あ、そういえば、来月はクリスマスがあるじゃんか、あーあ、
 この調子じゃ、今年のクリスマスもまた一人っきりかぁ…」
 
ボクは深い落胆とともに、自分の気持ちを整理しようと必死でした。
そして3日間考えた末、ある結論を出しました。
 
「よし、彼女に会えないのはめっちゃ寂しいけど、もう自分からは連絡を
 するのはやめよう。これからは彼女の気持ちをもっと大切にして、長い目
 で彼女と向き合っていけばいいんだ。少し時間をおいて、彼女の気持ち
 に任せよう。もし、それで縁がなかったら、潔く諦めよう」
 
気持ちが吹っ切れたボクは、もうクリスマスのことはどうでも
よくなっていました。
 
それより自分をもっと磨いて、彼女に相応しい男になっておかなくちゃ
という思いが強くなっていきました。
 
そうこうして毎日が過ぎていった12月の初旬のある日、突然電話の
ベルが鳴りました。(ボクは当時一人暮らしをしていました)
 
「もしもし」
 
「あ、カミエルさんですか?」
 
(おおぉぉー、か、か、彼女だぁー)
 
「あ、ど、どうも…」
 
「明日って、お時間あります?」
 
「はい、はい、お時間あります!(なくてもつくるよ!)」
 
「あのー、よろしければ一緒にお出かけませんか?」
 
「はい、はい、一緒にお出かけします!(死んでも出かけます)」
 
ちょっとビックリして、お得意のキョドりモード全開になりました。
 
「それでは、また明日…」
 
ガチャン、プープープー…
 
電話が切れたあと、しばらくその音を聞いてボーっとしていました。
 
そして次の瞬間 「おおおおおおっっしゃぁぁぁーーー」と
 
ガッツポーズをとったのはいうまでもありません。
 
めっちゃ嬉しかったです。初めて彼女から電話してきてくれたんですから!

そしてその翌日から、またもや不思議な出来事が起こりはじめます。
 
彼女と会って、一緒に電車に乗っている時でした。
 
なにやら、彼女の顔にキラキラと光るものが見えます。
 
なんだろう?と思って見ていると、微かに金色の粒状のものが…
 
化粧に使うラメでもつけてるのかな?と思いましたが、それにしては
粒が大きすぎます。
 
不思議に思って彼女に「ねえ、今日ってラメつけてるの?」と聞きました。
 
「え?つけてないですよ。どうして?」
 
たしかに、彼女はそんな派手なお化粧をする人ではありませんでした。
 
「だって、ほら、キラキラ光るものがいっぱい顔についてるよ」
 
と、ボクはそのちいさな金の粉をすっと取って彼女に見せました。
 
「ええー、なにこれ?」彼女も不思議そうに見ています。
 
すると、彼女が「ああっ」といいました。
 
「なにこれ、手にもたくさんついてる!」
 
手のひらや甲にも金の粉が…彼女が腕をめくってみると、めくった腕の
ところにも大小無数の金粉がついていました。
 
その時は、きっと服かなにかに付いていたものが剥がれて付いたのかな?
というふうに思っていました。
 
しかし、その時からです。2人の仲が急接近してきたのは。
 
なぜか、その後も2人で会っている時には、必ずこの金粉が彼女に
現れたのです。さらに不思議ですが、しばらく経つとその金粉が
いつのまにか小さく消えていってしまうのです。
 
そして、ある日彼女と電話をしている時、「あ、また出たぁー」と
いって電話口で彼女が叫んでいます。
 
マジで?なにこれ?何の意味があるの?
 
さすがにこれにはボクもビックリしてしまいました。
後から彼女に聞いたのですが、どうやらこの現象が現れてから、
彼女の気持ちが少しずつ変わっていったそうです。
『この人とは、なにかあるんじゃないかな』と思い始めたそうです。

そして、運命のクリスマスの日が近づいてきました。
 
「一緒にクリスマスを過ごさない?」
 
勇気を持って、ボクは彼女に言いました。
 
「はい…」
 
と、彼女は応えてくれました。
 
『だぁぁぁーー、やったよぉー、やっぱ星に願いをかけて良かったぁー
 お星様ぁーありがとぉーーーー!!』
 
めっちゃ舞い上がったのはいうまでもありません。
 
そして実は、ボクにはもう一つ夢があったのです。
 
クリスマスの日に、好きな人と「素晴らしき哉、人生」という映画を
一緒に観ること。(白黒でかなり古い映画ですが名作ですよ)
 
その年のクリスマスイブの日、とうとうその夢は叶いました!
 
おおー、長い間耐え忍んできたことが、やっと報われたよぉー。
 
そしてその日も、あの金粉が彼女に舞い降りました。
 
それはボクにとっては、聖夜に降る金色の粉雪でした。
 
ホワイトクリスマスじゃなくて、ゴールドクリスマスですよ!
なーんてゴージャス!(笑)
 
その時、彼女が本当に幸せの天使に見えたのでした。
 
彼女もその頃には「確信」に変わっていたといいます。
『この人と、わたし結婚するのかもしれない…』

そして年が明けて間もなく、2人で夜景を観にドライブに行った時に、
ボクたちは、結婚することを決めたのです。
 
すると、不思議ですが、それまで会うたびに降っていた金の粉は
結婚を決めたその日以来、パッタリと出なくなったのです。

本当にウソのような本当の話です。
 
世の中には不思議なことがたくさんあるんだなー、と感じます。
 
それからボクは、世の中には常識では説明ができないようなことが
たくさんあるんだということに興味を持ちました。
 
この世界って、もしかしたら、みんなが気づかないだけで、
「奇跡」って日常的に起きてるのかもしれませんよね。
 
それに気づくか、気づかないか…
 
日常のなかの奇跡は、あなたのすぐ近くで、今この瞬間にも、
起っているかも知れませんよ。
 
Camiel
映画「素晴らしき哉、人生」は本&CD&DVD紹介コーナーにあります。
これ、ぜったいお薦めですよー。

聖夜に降る金色の粉雪…(1)

カミエルのドーン・コーラスおよび、
バンド男誕生秘話をお読みいただいている皆さま!

Merry Christmas Eve!でございます。☆⌒(*^-°)v

つたない話をお読み頂き、本当にありがとうございます。
なんとなく書き始めたものですが、みなさまに支えられて
15歳の少年は少しずつ成長していっています。
その道のりは山あり谷ありですが、どうぞこれからもよろしく
お願いいたします。

さて、クリスマスということで、本日は少し趣向を変えて、
この少年が大人になり、24歳のクリスマスを迎えたときの事を
お話しをしようと思います。

以前の日記「この世で一番の奇跡」の続編となります。

http://camiel.livedoor.biz/archives/9865947.html

時は90年代のはじめ・・・

この年は、ボクにとって生涯忘れることのできない年となりました。

ちょうど、その年の初旬の頃は、自分自身けっこういろんな事が
あって、ボクはちょっとヘコんでいたのです。

年末に以前組んでいたバンドのメンバーと共に某プロダクションの
オーディションを受け、晴れて全員採用となり、新たなプロジェクト
を始動する準備をしていた時に、ボクはとある事情でそのプロジェ
クトから抜けなくてはいけなくなったのです。
(別に悪いことしたわけではないですよ)
代わりのドラムを探してきて、彼にそのメンバーになってもらい、
自分は、主にスタジオのレコード製作の現場でドラムの録音や
ドラムマシンでの打ち込みなどを担当していました。
その後、知り合いからの紹介で、某音楽院でドラムとアンサンブル
の講師もしていたのです。

時はバブルがはじけた時期でしたが、まだ深刻な経済不況は
訪れていませんでしたので、けっこうアイドルのバックバン
ドの連続ツアーなどに参加すると、かなり良い収入にはなり
ました。

春になり、落ち込んでいた気分もだんだんと晴れやかになって、
なんだかとてもワクワクした感覚に包まれることが多くなりました。

なにか新しいことが始まるような、そんな感じでした。

そして、その年の夏にバックバンドのツアーに参加して地方に
行った時のことです。

天気が良くて、夜は星がキレイだったので、一人で星を見に散歩に
出かけたのです。天の川がよく見える最高の星空でした。

その時に流れ星をたくさん見たのですが、流れ星といえば、

そう!「願い事」ですよね。

そこで、ボクは流れ星に願い事をしたのです。

どんな願い事かというと…

「今年のクリスマスは一人はイヤです・・・(笑)
 好きな人と一緒に過ごせますように」

まだ、季節は夏なのに?


ええ、そうです、そうですとも、切実なのですよ!

ボクはそれまで、クリスマスの日に恋人と呼べる人と
一度も一緒に過ごしたことがないのですから!

残念ー!(ちと、古い)


あ、ここで断っておきますが、一応以前も彼女はいたんですよ。
でも、なぜかクリスマスの日には、その前に別れてしまったりで、
一度も恋人とメリークリスマス!なーんてことを味わった事が
なかったのです。(涙)

しかも、いつもその日は一人で家にいたりすることが多く、
なんともさびしいクリスマスばかりを過ごしてきたのです。

クリスマスイブに、ほんとは見たくないけど明石家さんまの
特番をついつい見てしまうこの悲しさよ!

「くそー、今年こそは、今年こそはぁーーーお星様ぁぁー」

と、真夏に一人で星に願いをかけている、さびしい男がひとり…

なんだか、やってること15歳と変わらないぞ…ってツッコまないで!


そして夏が過ぎ去り、残暑まだ残る9月・・・

ボクは、ある人と運命の出会いをするのです。

そのある人とは・・・

 

…いや、すいません奥さんなんですけど。(笑)

 

彼女はある公演の受付嬢をしていました。
(いわゆる受付天使ってやつですか)


はじめて彼女を見た瞬間!

ボクの目はしばらく彼女に釘付けになってしまいました。

よく電撃が走る!とか、ビビビっときた!って言いますよね。

あれ、本当によくわかります。

彼女はけっして派手な感じではありませんでしたが、
とても清楚で聡明な雰囲気があり、
それでいて芯の強そうな、美しい女性でした。(照)


そして、次の瞬間

「あ、オレ、この人と結婚するんだ!」と思いました。

思った…というよりも言われたという感じに近いかなぁ。

言われたって誰に?とツッコまれると困るのですが…

うーん、誰なんだろう?

でも、明らかに自分以外の誰かにそう言われた感じがしたのです。

声というよりは、胸の中から話しかけられるという感じでした。


そして公演が終わって、ボクがそのまま帰ろうとエレベーターに
乗ろうとした時、なんと、こともあろうに、

「まって!彼女に声をかけなさい!」って言うんですよ、その誰かが(笑)

あまりに突然だったので、ボクはそのままその階のトイレに駆け込み、

そこで、この「誰か」と「自分」が、なんとも奇妙な押し問答を
始めたのです。

ボク『おいおい、はじめて会った人にいきなり声かけたらヤバいだろう!
   ぜったい怪しいヤツと思われるぞ。
   それにオレ、ナンパなんてしたことないし、第一自信がないよ』

誰か『大丈夫です、今日声をかけなければきっと後悔しますよ』

ボク『な、なんだよ、その知ったような言い方は?いったいあんたは
   何者なんだ!』

誰か『そんなことはどうでもいいから、勇気を持って話しかけてみなさい』

ボク『いや、ムリムリ、絶対無理っす!
   たしかに彼女は素敵な人だったよ。うん。
   でも、ちょっと年上っぽいし、緊張するし、
   やっぱ、いくらなんでも無理っすよ』

誰か『いいから、言うとおりにして下さい』

ボク『はあ?何いってんだよ。あんた何様?カッパ何様?(笑)
   だいたい彼女がどこにいるのかわからないじゃないか!
   今から探したって、もうきっといないよ』

誰か『・・・・・・・』

ボク『おい、なんとか言えよ!』

誰か『・・・・・・・』

急に、その声が沈黙してしまいました・・・

トイレの中で、わけのわからない会話をしている自分。

これ、客観的にみたらぜったい怪しいって!

というか、一歩間違えたらヤバいって(笑)

『ああ、やっぱり、これって自分の彼女欲しい願望のシャドウ
 なのかも知れないよなぁ…やばいやばい…
 そもそも、オレ結婚とかまだ全然興味ないしな。
 あーあ、しかし、なんだったんだろうね今のは? 』

…と、平静を取り戻したボクは、そのまま帰る決心をして
トイレから出ていきました。

そして、エレベーターに向かおうとしたその瞬間!


な、な、なんと目の前に…

彼女が…


なぜか、彼女は2人の子供に手を引っ張られながら、
エレベーターホールまで連れられてこられたようでした。

「ねぇ、ねぇ!わたしたちの保母さんになってぇー!」

「はいはい、わかったわよ、じゃあ何して遊ぼうかな?」

…という会話が聞こえてきました。

その時、ボクの中でなにかの「スイッチ」がカチッと入りました。

不思議と、さっきまで見えない誰かと問答をしていたその答が、
なぜか一瞬のうちに理解できたのです。

これは、声をかけろということなんだ!

本当にその瞬間に意識が切り替わりました。

その時、沈黙していたあの声が、

『さあ、今です、声をかけなさい!』

と再び言ってきたのです。


そこで、思い切って…

「あ、ど、どうもこんにちは!」

ボクは、勇気を出して彼女に声をかけました。

「あ、あのー今日みたいな公演はよく開催しているのですか?」

子供達に引っ張られながら、彼女は応えます。

「あら、今日来ていらいた方ですか?」

おおー良かった…とりあえず会話してくれた!

ボクはちょっと安心して、

「そ、そうです、あのー、とても素晴らしかったんで、
 ぜひまた機会があったら参加しようかなぁと思っているんですが…」

すると彼女は、

「えー、そうなんですか?あっそうだ、ちょうど良かった。
 明日なんですけど、仲間内でちょっとしたお茶会があるんですよ。
 もし、よろしかったら来ませんか?」

(げっ!逆にこっちが誘われてしまったよぉーマジでデジママジデジマ…)

「はい!いきます!」(即答・この間一秒)

「そうですかぁ、ぜひいらして下さい!
 えーと、場所はですね、○○○駅の近くの
 すかいらーくなんですけど、時間はですねぇ・・・・・・」

その間、ボクは舞い上がってしまって、彼女の顔をボーっと
見つめながら、話はほとんどうわのそらで聞いていました。
しっかり、場所と時間だけは憶えましたが…(笑)

その間の会話はホンの一瞬のようでもあり、とても長い時間が
経ったようでもあり、不思議な感覚でした。

「わ、わかりました。ぜひ参加させていただきます。
 そ、それでは、また明日…」

自分でも、なんだかキョドっていたとは思うのですが、
緊張のあまり、体がカクカクしながら、
やってきたエレベーターに乗り込みました。

そして、エレベーターの扉が閉じるまで、彼女はボクを見送って
くれました。

子供達は彼女の周りをクルクル回っています。

この子達が「天使」に見えたのは、いうまでもありません。(笑)


扉が閉まる瞬間、彼女の顔を見つめながら、かるくお辞儀をして
すぅーーっとドアが閉まりました…

『マジかよ…』

ボクはしばらく放心状態になりながら、
さっきの「誰か」に問いかけました。

『おいおい、いったいなんだったんだよ、今のは?』

すると、

『ほらね、だからいったでしょう、うまくいくって』

と、その声が応えました。

『ほらね、じゃないよ!おまえはいったい何者なんだよ』

『・・・・・・・』

『おい、なんとか言えよ』

『・・・・・・・』

それから、パッタリとその声はしなくなりました。

その帰り道、ボクの足取りがフワフワと宙に浮くようだったことは
いうまでもありません!
気持ちは、完全に宙に舞い上がっていました。


そしてその翌日、ボクは電車に乗って彼女から教わった駅まで
行こうとして、駅の改札まで来た時でした…

また、例の「誰か」がボクに声をかけてきました。

『今日は、車に乗って行った方がいいよ』

『なにー?もう駅まで来ちゃったじゃないか!
 ここから車の置いてある駐車場まで遠いんだぞ!』

また、奇妙な一人会話が始まりました(笑)

それでも、昨日の事があったので、無視することはできなかったボクは、
そこから急いで車の置いてあるところまでダッシュしました。

なぜ、車で行った方がよかったのか?

その答は、後々わかりました。

なんと、そのお茶会が終わった後、時間も遅くなったので、参加した
女性陣をボクが車で送ることになったのです。
しかも、ドラムを輸送するためにボクは1BOXのワゴン車に乗って
いたので、たくさんの人を乗せることができました。
(ありがとう!ドラム輸送車くん!)

なんの計らいか、彼女は最初後ろの席に乗ろうとしていたのですが、
おばさんに「若い人同士で、あなた前に乗りなさいよ!」と言われ、
ちょっと強引ですが、彼女が助手席に乗ったのです。

『おおぉー、おばさま、ありがとうー!』

と、ボクの心は叫んでいました。

そして、さらにお約束?通り、彼女の家が一番遠かったので、
最後は2人っきりになりました。(^_^;

初めて会ってから次の日に、すでに彼女の家まで行ってしまいました…

(ちょっと、デキすぎ君?でも、本当の事なんですよー)

時は9月・・・

ボクは、あの夏の日、流れ星に願いをかけたことを思い出していました。

今年のクリスマスは、もしかしたら?もしかしたら?

この流れに、ボクの期待は否応なしに高まっていきました。

さて、この青年(笑)は念願のハッピークリスマスを迎えることが
できるのでしょうか?

(明日のクリスマスにつづく…)

バンド男誕生秘話(4)

前回からの続きです…



先日のショックから抜け出せないまま、少年は毎日
足取りの重さを感じながら、学校に通っていました。



教室では、すでにクラスでの友人ができてはいたものの、
彼らは楽器をやっているような様子はなく、少年のバンド
メンバー探しは振り出しにもどってしまいました。


友人もでき、クラスのみんなともうち解けて仲良くなり、
それなりに楽しい高校生活が過ぎていきました。


しかし、少年の心の中には、ポッカリと穴があいたようで
何とも言えない不足感と不完全燃焼感がありました。



「はぁー、バンドやりてぇなー。ドラムなんてさ、一人でやって
 いたって何にも面白くないよ。
 ドラムはバンドがあってはじめて、その存在が生きるもんだ
 からなぁ…」



そんなある日、校内の廊下を歩いていると、後ろから元気の
いい声で、


「おおー、カミエル!ちゃんと勉強がんばっとるかぁー」


と、先日の関西弁教師、戸塚(仮名)先生が現れました。


「ああ、どうも」


少年は元気なく応えました。


「おまえ、クラブ活動はどこに入ったんや?」


「いや、まだクラブには入ってないです…」


「なんや、おまえ。おまえみたいにエネルギーがありあまっとる
 ヤツは、どっか運動部にでもはいればいいんや。
 
 ワシが顧問しておる陸上部にでも来るか、どうや?
 バンドみたいな不健康なもんに夢中になるんやったら、
 若者らしく運動して汗をかいたらいいんや」


(くっそー、ドラムだってけっこうな運動量なんだぞー。
 まったく、イメージだけで不健康とか言われても
 困るんだよなぁ…)


と、少年は思いつつも、あまり波風を立てるといけないので、


「オレ、運動部に入る気はないんです。せっかくですけど…」


そう言って、その場をやり過ごしました。



その高校は、校則によって生徒は何らかのクラブに所属しなくては
いけない事になっていました。
所属クラブを決める期間は1ヶ月間あり、その間に自分の入る
クラブを決めなくてはなりませんでした。



「あーあ、なんだか窮屈なところだよなぁ、でもどうすんだよ、
 なにかクラブに入らなきゃいけないなんて…
 うーん、ドラムが叩けるようなクラブないのかなぁ…」


と、その時少年はふと思い出しました。


「そういえば、新入生歓迎会の時に、ブラスバンド部が演奏を
 していたっけ、ドラムはあんまり上手くない先輩がやっていたな。
 そうだ、ブラバンに入れば、堂々とドラムが叩けるし、放課後も
 学校で練習ができるじゃんか!」



少年は、さっそくその日の放課後に、ブラスバンド部の見学に
向かいました。


何人かの見学生が来ているなか、少年はソワソワしながら
落ち着かない様子で、ブラバンの演奏を聴いていました。


その高校のブラスバンド部は出来てからの歴史も浅く、
少年から見ても全体的にあまり上手とは言えない状態でした。
ドラムをやっている先輩も、リズムキープがなかなかできず、
叩き方も撫でるような叩き方で、パワーが感じられません。


『おおっ、これはオレにもチャンスがあるかも知れないぞ』


少年は中学2年からはじめたドラムの腕にちょっとは自信が
あったので、ブラバンのドラムの先輩よりも自分の方が上手い
という確信がありました。


そこで、演奏中にもかかわらず、少年はブラバンの顧問の
先生のところに行き、


「すいません!ちょっとボクにドラムを叩かせてもらっても
 いいですか?」


と、訪ねました。


すると、顧問の先生は、


「ん、なに?見学の1年生か?ドラム叩けるのか、君?」


「はい、叩けます!」


自信満々で少年は答えました。


しかし…


「うーん、今日は見学だけにしておいてくれ、新入生の楽器選別は
 後々やっていくから、入部希望ならそこのノートに名前とクラスを
 書いておいて!」


『なにー?』


すっかり拍子抜けした少年は、上級生に言われるまま入部希望者
ノートに記入を求められ、渡されたペンを握って、ノートに名前を
書こうとしました。



その時、突然少年の心に、ある疑問が湧いてきたのです。



『おい、本当にそれでいいのか?
 おまえがやりたかったのは、ブラバンでドラムを叩くことか?
 おまえはコージー・パウエルのようなロックドラマーに
 なるんじゃなかったのか。
 おまえはロックバンドを組むんじゃなかったのか?』



ペンを握ったまま、しばらくその場で考え込む少年…



「君、どうしたの?」


という、ブラバンの先輩の声に、少年はハッとします。



「あ、あの、いいです。オレやっぱりやめます、すいません!」


そう言うと、少年はその場を走るように立ち去りました。



「ううっ、くっそー、オレはなんて意志が弱いんだ…
 自分が本当にやりたいことをやらないで、
 もう少しで妥協するところだった。
 そうだよ、オレが本当にやりたいのは、
 ブラスバンドじゃなく、ロックバンドのドラムなんだ!」



少年は安易に流れようとした自分自身に対する怒りと、
しかしながら、どう考えてもロックバンドを組めるような
状況ではないこの厳しい現状に、だれもいない放課後
の廊下で、ひとり悔し涙を流すのでした…



自転車で高校へ通っていた少年は、春の暖かい夕暮れの
歩道で自転車を押しながら、なにやらブツブツと祈るような
言葉を唱えながら歩いていました。


『くぅぅー、神様!ロックの神様!
 オレにロックバンドをやらせてください!
 そして、そのバンドでステージへ上がらせて下さい!』



少年の悲痛な叫びは、周りの雑踏の中に埋もれて
通りを走る車のうるさい騒音にかき消されていきました…



その晩、少年は家に帰るなり、スティックと練習用のパット
を持ち出し、近くの公園で遅くなるまで練習をしました。


『きっと、いつかチャンスがくるさ。がんばっていれば、
 きっと神様がオレにバンドをやらせてくれるさ。
 それまでは腕を磨いておくんだ。
 ぜったい周りのヤツには負けないほど、
 ドラムを上手くなっておくんだ』



少年のひたむきな願いは、ロックの神様に通じるのでしょうか…


 


翌日、少年はお昼ご飯を学食で友人たちと食べた後、
しゃべりながら1年生の教室が並ぶ廊下を歩いていました。



ちょうどD組の前を通りかかった時、D組の教室から髪の長い
かなりイケメンの生徒が、こちらに近づいてきました。


「よう!」


彼が声をかけたのは、少年の隣にいるクラスメイトでした。


「今日、どうする?」


「いや、今日部活あるから、先帰っていいよ…」


どうやら、彼らは同じ中学出身の友達のようで、
帰りに一緒に帰る相談をしているようです。


『こいつ、けっこうカッコイイじゃん、
 本田ヤスアキにそっくりじゃんかよー』


(本田ヤスアキ(字忘れた)を知ってる人っていないかも…
 当時の金八先生シリーズの、2年B組仙八先生
 という番組にシブガキ隊や三田寛子らと共演していた、
 謎の美少年役の人です。
 その後、原田知世主演のテレビドラマ「ねらわれた
 学園」で、これまた京極少年という謎の超能力者
 の役でした。ちなみに彼自身もミュージシャンだった。
  ちなみにボクは原田知世ファンだった(笑) )


そんなことを思いながら、少年は隣で彼らの話を聞いていました。



すると突然、クラスメイトの友人が彼に向かって、


「あ、そうだそうだ、おまえに紹介するよ。
 この人カミエルっていうんだけどさ、
 なんでもドラムやってるらしいんだよ。
 おまえバンドやりたいって言ってただろ?」


 


 


『は?』


 



おいおい、ちょっとまて、今なんて言った?



少年は、一瞬何が起きたのかわからなくなり、
その友人とイケメンの彼の顔を交互に見ながら
首を左右にプルプルと動かしました。


 


「ええっ?マジで!君ドラムやってんのー?」



本田ヤスアキ似の彼が少年に言いました。



少年は、湧き上がる興奮を必死に抑えながら



「き、き、君は?君は?あ、あ、あの…
 が、楽器は?楽器はなにやってるの?」


少年はかなりドモリながら聞き返しました。


イケメンの彼は、


「ああ、オレ、最近ベース始めたんだよね。
 そんでバンドやりたいなーって思ってたんだけど…」


 







キタ━━━(゚∀゚)━━━!!! (お約束)


 



『おおぉぉぉー、ロックの神様ぁー、
 あなたは私を見捨ててはいなかったのですねー!』



少年は、その場で飛び跳ねたい衝動を抑えながら、


「べ、ベースやってるの?いつから?」



「うーん、自分ずっとギターやってたんだけどさぁ、先輩が
 ベース弾いてるのみて、かっこいいなって思って、
 ちょっと前にベース買ったんだよね、まだ全然うまくないけど」


 


すんげぇ、すんげぇ、すんげぇ、すんげぇ…


 


まるで、あややの「めっちゃホリディ」のように、
少年の頭には「すんげぇ」の言葉がリピートしていました。



「君は、ドラム、いつからやってるの?」



「あ、はい。あのう、一応中2からですが…」


なぜか突然、少年は敬語で返事をしていました。


頭の中がパニックになっていたようです。



「自分ら、タメなんで、別に敬語使わなくていいよ」


と、彼に言われ、ハッとした少年は、少し落ち着きを
取り戻しながら、


「あ、あのさ、君はどんな音楽聴いてるの?」



少年はドキドキしながら彼に聞きました。



すると、その彼は・・・



「銀蝿とか…」


 



「は? な、なに?」



「横浜銀蝿とか・・・」



え?


い、今なんといいました?…


「ヨコハマギンバエ」とおっしゃいましたか?



その瞬間、少年はその場で硬直して固まってしまうのを
必死でこらえていました…



『なんで、横浜銀蝿なの…
 たのむ、レインボー、マイケルシェンカー、
 いや、ツェッペリン、ディープパープルでもいい
 そう言ってくれ、たのむ、そう言ってくれぇぇー
 …ていうか、おまえビジュアル全然ちがうじゃん!』


 


言葉にならない少年の心の叫びは、
イケメンの彼に向かって何度もそう叫んでいました。



少年のロックバンドへの道は、まだ遠い・・・


(次回へづづく…)

バンド男誕生秘話(3)

前回からの続きです…


「あーあ、オレ、これからどうなんだろー」

少年は、単純にバンドメンバー獲得のための作戦を
決行しただけだと思っていたのですが、突然の状況に
不安と戸惑いを隠せませんでした…


職員室につくと、さっきのおじさん(やっぱり先生でした)が、
迷惑そうな、かったるそうな顔をして待っていました。


「えーと、それじゃ、それ持ってこっちに来て」

と、職員室の奥にある「相談室」と書かれた部屋に
ボクに入るように言いました。


「げげ…、入学早々、相談室かよー
 オレ、そんなヤバイことしたのかなぁ」

少年は、どうやら自分のやったことが、けっこう大変な
ことだったのだと、その時初めて気づきました。


相談室へ入ろうとした時、後ろの方から大きな声で、

「おおっ、こいつか?バンバンやってたヤツはー!」

と、また違った先生が少年のほうへやってきました。

「おまえ、一年か?」

「あ、はい…」

「どこのクラスや?」

「あ、B組です…」

「B組かー、あれ、担任だれやっけ?」

「青山(仮名)先生です…」

「はぁー、青山さんも大変やな、
 丙午ってウワサには聞いてたけど、
 こんなんが入ってきたんかー」

その先生は、威勢のいい口調で、なにやらわけの
わからないことを言っています。


後で気づいたことですが、どうやらボクの生まれた年が
60年に一回の丙午(ひのえうま)で、第2次ベビーブーム
成長期に極端に出生率が下がった年なのです。

その年の人口が低い分、生徒の「質」が落ちるだろうと
その高校の先生方は考えていたらしく、1年生の
担当教師は、選りすぐりの厳しい先生陣で占められて
いたのでした。


 ああ、どうりでボクが高校入れたわけだ(笑)

 

相談室に入ると、先程の先生が座っていて、後から
担任の青山先生もやってきました。

その後、またあの関西弁の先生も入ってきたり、その他に
少し年配の女の先生も登場し、一気にボクの周りには
先生だらけになってしまいました。


「おいおい、なんなんだよ、この状況は…」


少年は、いまだに状況がよくわかりません。


そして、担任の青山先生が、

「おまえなー、いったい何やらかしたんだ」

と、言ってきたので、

「いや、その、ドラムの練習を…」

「ドラムだぁ?ドラムってあの太鼓のことか?」

「そうです…」

「どこでやってたんだ!」

「中庭で…」

「中庭ぁー、なんでまた?」

「はぁ…」

その時、最初にきたあの冷淡な先生が、

「いやね、中庭で太鼓叩いてうるさいのがいると
 たまたま私のところに通報がはいったんですよ」


「え?通報?なにそれ…」

少年は、なにやら不思議な世界に迷い込んだような
錯覚にとらわれました。

すると青山先生は、

「はぁ、バカかおまえ。あんなところで叩いたらうるさいに
 きまっとるじゃないかー」

「い、いや、昼休みだし、大丈夫かな、と思って…」

少年のかぼそい説明を押し切るように、
関西弁の先生がたたみかけます。

「おまえなぁ、ここは中学ちゃうんやで、高校生に
 なったんやから、もっと自覚せなーあかんやんか」

「は、はあ…」


すると、それまで黙って聞いていた女の先生が、

「あなた、あんなところで太鼓叩いたら、他の生徒の
 迷惑になるでしょう?それくらいのことわからない?」

と、少しやわらかく話してくれたので、

「あ、いや、ボクはバンドを…、えーと、高校来たら
 あの、バンドをやろうと思っていたんで…」

少年の声には力がありません…

「バンド?…バンドってなんです?」

その年配の女の先生が他の先生に聞きました。

おいおい、バンドも知らないのかよ、と思った少年は、

「バンドは、あの、それぞれの楽器を使って、その…」

と、少年がこのおばさん先生に説明しようとしたその矢先!

「あー、バンドだぁ?、
 そんなロクでもないことをしようとしてんのかおまえは!」

担任の青山先生がいきなり怒鳴りました。

話を聞いていた、他の先生方も一様に顔をしかめました。

 

今では考えられないことかも知れませんが、

「エレキをもったら不良だ!」(笑)

みたいな風習が、まだこの高校には残っていたようです。

そして、丙午組ということもあって、先生方は何か問題を
起こしそうな生徒はいないか、とピリピリしていたのです。
まあ、いわゆる初めが肝心だということだったのでしょう。

(ああ、飛んで火に入る夏の虫、とはこのことです)

 

 ロクでもないこと…?

その先生の言葉に、少年の心は強く反応しました。

ちょっと、キレかかりながら…

「ロクでもないことじゃないですよ!!」

まだ、自制心を持たない純な少年は、バンドを貶された怒りで
担任の先生に食ってかかりました。

「なんだと、おまえ自分の状況わかってんのか!」

「バンドをやっちゃいけないんですか?」

「ばかやろう!今こうやって現に迷惑かけとるだろうが」

「なにが、迷惑なんですか!高校は昼休みに楽器の
 練習もしちゃいけないんですか!
 ボクは高校にバンドをやりにきたんです!
 バンドを組んで、学園祭に出たいんですよ。
 それで、そのメンバーをいま探しているんです」

少年は、開き直って、素直に自分がしていることの
真意を話そうとしました。

しかし…


「それが、アホたれいうとるんじゃ!高校は勉強しにくる
 ところや、楽器の練習なんぞ、やらせるかーボケぇ」

と、関西弁の先生も混じり合って、しばらく少年と先生方の
口論が続きました。


ああ、この事がいずれ少年を苦境に立たせる原因となろうとは、
その時の少年は知るよしもありませんでした…


すると、しばらく静観していたあの冷淡な先生が…

「ふー、これはとんでもない勘違い坊やだな」

と、不気味に囁きました。そして続けて、

「あのね、君。この高校はバンド活動禁止なんだよ。
 ちゃんと校則にも載ってるでしょう。
 だから、そんなことをしても無駄だよ…
 それに、学園祭には審査があってね、あんなガチャガチャ
 うるさいバンドなんて、まず出ることはできないだろうね」


「え?」


「・・・・・」


しばらく絶句した少年は、


「え?…いまなんと?」


すると、あきれた顔で、その先生は、

「ここはね、バンドなんかやれるところじゃないんだよ。
 学園祭でもいままでバンドなんか出たこともないんだから。
 というより、先生方がみんなそんなことさせないよ」


「は、はぁ?…」


少年は、あまりのショックで、しばらく何も言えませんでした…


しばらくの沈黙のあと、

「どうしましょう?一応、この楽器は、しばらく私が
 預かっておきましょうか」

と、担任の青山先生が、そんなことを言い出しました。


な、なにー!

少年は、それだけは勘弁してくれ!といわんばかりに

「いや、だめです、えー、あ、これ、あの、借り物なんです!
 すいません、ちょっと、だから、だめです…」

と、かなりキョドりながら、みえみえのウソをついて楽器を
返してもらおうとしました。


すると、先程の年配の女先生が、

「まあ、もう5時限の授業も始まってますし、とりあえず
 今回は初回ですし、本人もわからなかったということで
 楽器の没収はしなくてもいいんじゃありませんか」

と、いってくれたので、間一髪、楽器没収は見送られました。

地獄に仏 パート2!


「そんじゃ、今回だけだぞ、今度持ってきたら即没収だからな」


とりあえず、最悪の楽器没収だけは避けられたので、
少年は少し安心し、なんとかこの場が穏便にいくように
願っていました。


「まあ、今日のところはもういいでしょう。彼も悪気は
 ないようですし、あなた、今後は気をつけてね」

と、女の先生がうまくその場を取り繕ってくれ、
なんとか話は終わりました。

あの関西弁の先生が最後に、

「もうアホなことすんなよ、高校生らしくちゃんと勉強せぃー」

と、少年にいい放ちました。


「・・・・・」


相談室をあとにした少年は、楽器を抱えてトボトボと廊下を
歩きながら、先程の話を思い出していました…


「なんてこった!オレはなんていう高校に来てしまったんだぁ。
 バンド禁止だとー、おまけに学園祭にも出れないだとー。
 おいおい、高校にいったら、思いっきりバンドできるんじゃ
 なかったのか?こんなんじゃ中学より悪いじゃないか!
 そんなたいして頭のいい高校じゃないのに、なんでそんなに
 厳しい校則つくってんだよー」

少年の入った高校は、バンド活動をはじめ、髪型や服装
その他の規則にとてもうるさい高校だったのです。


早くも、ロックバンド結成&コージー・パウエル計画が暗礁に
乗り上げてしまった少年は、深い絶望感に苛まれました。

 

「よーし、ロックバンドを組むぞ。

 バンドを組むのに手っ取り早いのは、高校に行くんだ。

 高校には、いろんなヤツがやってくるにちがいない!
 
 もちろんオイラがドラムをやるのさ。
 
 そう、コージー・パウエルのようなドラマーになるんだ!」


その念い一つで、苦手な勉強をして晴れて高校生になった
少年には、その状況はあまりにも厳しいものとなりました。

ましてや、思わぬところで前科を作ってしまった少年は
先生方の要注意ブラックリストに載ってしまったのです。

 

ああ、この先、失意の少年に光はあるのでしょうか…


(次回につづく…)

バンド男誕生秘話(2)

…前回の続きです。


目をつぶって、陶酔している少年の肩を、後ろから
「トン、トン」と誰かがたたきました。

「おおっ、きたのか? えぇー、もうきたのか?
 早くもオレの作戦効果アリかぁー」

ほんの一瞬のうちでしたが、ボクの頭にはいろんなことが
駆け巡りました。


ギターか?(^v^)


ベースか?(^u^)


キーボードか?(´ー`)


ええー、もしかして一番難しいと思っていたボーカルかぁー?


 o(^o^o)o(^o^)o(o^o^)o イエーイ ←少年の頭の中


少年は、期待と不安に胸をときめかせて目をあけ、
後ろを振り返りました。


 さあ、バンドマン、いらっしゃ〜〜い!


  (^(^(^(^(^(^^;)

 

その時、少年の前に立っていたのは…

 

 


(・.・;)あれ?

 


「ん?…だれ…このおっさん?」


少年の前には、見たことのないおじさんが立っていました。


???…(’_’、)


少年がキョトンとした目で見上げていると、

そのおじさんは、おもむろに少年にむかって、

「君、クラスと名前は?」

と、聞いてきました。

「げっ!」

少年は、そのおじさんが、きっとタダのおじさんではない
ということを、状況から察しました。

「えー、あ、あの、1年B組のカミエルです…」

「うーん、とりあえずそれ全部もって、
 ちょっと職員室にきてくれる」

その人は、まるで氷のような冷たい表情で一言告げると、

ツカツカと先に行ってしましました。

一瞬の出来事で、その状況がいまいち理解できなかった
少年ですが、その人がおそらく「先生」であろうということは
なんとなくわかりました。


急いで、楽器をケースの中にしまい込んでいるその時…

ちょうど、教室の上の方から見ていた上級生の男子生徒が、

「うるせぇーんだよ、ばーか!」

と、少年に向かって罵声を浴びせてきました。

「ははは…、だっせぇ、怒られてやんのー」

他にいた上級生たちも、口々にいってきます。


その声に、少年はショックを受けました…


「うう…別に、オレはバンドのメンバーを
 探したいだけだったんだよぉー。
 くっそー、せっかくいい考えだと思ったのになぁ…」


かなりヘコんだ少年は、トボトボと楽器を持って
中庭を歩いていきました。

「やっべー、オレこれから怒られるのかなぁ、
 まあ、たしかにかなりうるさかったからなぁ」

先ほどの勢いはどこへやら、一気に少年の気持ちは
不安で一杯になりました。


すると、罵声が聞こえていた隣の教室から女子生徒の声で

「おーい、きみー。がんばりなー」

という声が聞こえました。

え? と、少年が見上げると…

「なかなかうまかったよー、またきかせてねー」

と、手を振って何人かの女子生徒の集団が声をかけてくれました。


地獄に仏とはこのことです…

「おぉ、なんてやさしいんだぁー」

少年はその言葉に、少し救われた気持ちがしました。


一方では罵声、一方では応援…


少年はなんとも複雑な気持ちと、ひきつった笑顔で、ちょこっと
その人たちに頭をさげると、あの冷ややかな表情の先生が待つ
職員室へと向かっていきました。

「あーあ、オレ、これからどうなんだろー」

少年は、単純にバンドメンバー獲得のための作戦を
決行しただけだと思っていたのですが、突然の状況に
戸惑いを隠せませんでした。


果たしてこの先、少年の運命は?…


(次回へつづく…)

バンド男誕生秘話(1)

(すいません、一連の題名変えてみました。(笑)
 流行にあやかろうというセコイ考えです…(^_^; )

 …さて、前回からの続きです。

ようし、ほんなら明日はこの戦法で、必ずメンバーゲットしたるでぇ!

グズグズしているヒマはないんや、わいは高校にバンドやりに
いっとんねんで!

…と、なぜか関西弁の口調に変わった少年は、明日への決意と
情熱の激しさで、その晩はよく眠れませんでした。

さて、その翌日、少年の取った行動とは…

「やっぱ、あれだよ。オレがドラムやってるってことを、
 みんなに知ってもらわないと始まらないよな。
 同じクラスにはいないのかも知れないから、
 他のクラスのヤツに知ってもらわないといけないもんな。」

一応、初日のクラスの自己紹介の時には、自分がドラムを
やっているということ、バンドを組みたいと思っていることを
クラスメイトには話してはいたのですが、これといって何も
反応がなかったのです。

その日、少年は朝早くからなにやら準備をし始めます。

「ちょっと、大がかりだけど、まあ、いいか…」

少年は、なんと学校にスネアドラムとスネアスタンドを持ち込む
ことにしたのです。

(注:スネアドラムとは太鼓の反対側にジャラジャラした
 スナッピーと呼ばれる弦が張ってある、ドラムの中心的な
 太鼓です、ドン、パン、ドン、パンの”パン”の方です)

「へっへっへ…我ながらいいアイデアだよ。これ叩きゃあさ、
 みんなイヤでも注目するだろうしね。
 名付けて、”バンドマンいらっしゃ〜い”作戦!」

少年は、どうやら休み時間を利用して、自分をアピールするため
にスネアドラムを叩くデモンストレーションをする気のようです。

(ああ、今の私なら絶対止めますよー、若いって怖いっすねー)

ちょっと、大がかりな荷物をもって登校した少年は、周りの
人から特異な目で見られながらも、なんとか楽器を運ぶことに
成功しました。
楽器が大き過ぎて、ロッカーに入らないため、しかたなく教室の
掃除用具入れの中にしまっておくことにしました。

「おぉー、やっぱイザとなると緊張するよなぁ…」

少年は、今さらながら、自分の小心者さに気づき、
そのことが気になって、授業など当然うわの空です。

そして、いよいよ最初の休み時間がやってきました。

ところが、少年はここに来ていきなり弱気になります。

「そ、そうじゃ、やっぱ昼休みのほうがいいっしょ、10分じゃ
短かすぎるけん、みどもは育ちがよろしいきにのぉ、したっけ
そういうことで…」

少年は、緊張のあまり、北海道弁と九州弁と土佐弁が
混じり合ったわけのわからない言い訳をして、初めの休み
時間を素通りしました。

「うわっ、ダサっ!」

少年は、我ながら自分の勇気のなさに少し自己嫌悪に
陥りました。

「ううっ、やばい、なんか胃が痛くなってきた…」

そんなら、始めからやるなよーっと自分ツッコミをいれながらも、
時は、刻一刻と過ぎ去っていきます。

端から見たら、その時の少年の態度はかなりキョドっていたに
違いありません。


そして、いよいよ運命の昼休みがやってきました。


授業が終わって、しばらく机にうつ伏せになっていた少年は
迫り来る恐怖と戦いながら、自分にこう言い聞かせました。


「オレは、ロックバンドを組むんだ!

 コージー・パウエルのようなドラマーになるんだ!」


うつ伏せになっていた少年は、意を決したようにスッと顔を
上げました。

「よーし、作戦決行だ!」

そして、そのままお昼も食べずに、掃除用具入れの中の楽器を
取り出すと、クラスのみんなの「なんだコイツ?」という視線を
横目に、スティックケースとスネアドラムを抱えて、教室を
出て行きました。

さすがに廊下で叩くのは、先生に一発で止められそうだったので、
いったん校庭に出て、ちょうど1年生のクラスが並んでいる
教室の目の前の中庭に回り込み、その場所にスネアドラムを
セットしました。

「よーし、ここまできたら、やってやる!
クールに決めないと、逆にめちゃめちゃカッコ悪いからな。」

すぅ〜っと息を吸い込んで、まず一打目を”ダン”と叩きます。

そこからは、まるで堰を切ったように、少年は夢中になって
ドラムを叩き始めました。

時折ドラムロールを混ぜながら、その時の自分の精一杯の
テクニックを披露し始めました。

恥ずかしさもあったので、しばらくうつむき加減で必死に
叩いていく少年…

ようやく、手も温まってきて、かなりリズムに乗れてきました。


そこで、恐る恐る、1年生の教室のある3階付近に目を
やりました。

たのむ、バンドマン!だれか見ていてくれ!


その頃、いきなり中庭から聞こえてきたうるさい音に気づいた
人々が、教室の窓から怪訝そうな顔をしてこちらを見ています。

「げっ!2年や3年の人達まで、こっちみてるよぉー」

そりゃそうです、いくら外だとはいえかなりの音量が出ています。

昼飯時の憩いの時間をぶち壊す、ドラムの音…


「もしかして、オレって顰蹙かってる?」


勇気を持ってやり始めた少年でしたが、上級生がこわーい
顔をしてこちらを睨んでいるのを発見しました。

「げ、やっべー、1年生だけにアピールするつもりだったのに…
あの人が、こっち降りてきて、シメんぞこらぁーって言ってきたり
したらどうしよう。くう、やっぱりちょっとまずかったかなぁ…」

少年は、心の中の動揺を隠すのに精一杯でした。

「でも、ビクビクしてやってたら、それこそ超ダサイよな」

そして、少年はいったん、スダン!と決めを入れ、何事も
なかったかのように、ケースからウォークマンを取り出し、
おもむろにヘッドホンをかけると、大好きなコージー・パウエル
の「オーバー・ザ・トップ」をかけて、再びスネアドラムを
叩き始めました。

「こうなったら、ある意味逆ギレだ!
だれも文句を言えないくらい、こっちがイッテしまえばいいのさ」

少年は、ある種の開き直りともいえる心境に到達し、その後、
多くの人が「なんじゃアイツ?ばかじゃねえの?」と冷ややかな
視線を向ける中、ひたすら曲に合わせて陶酔していきました。

バカです…はっきりいって、バカです…(^_^;

でも、中途半端にしたら、もっとバカです。

やってしまったものは、もう止められません。

覚悟を決めた少年は、休み時間一杯ドラムを叩き続けました。


と…その時です。


目をつぶって、陶酔している少年の肩を、後ろから
「トン、トン」と誰かがたたきました。


「おおっ、きたのか? ええー、もうきたのか?」


少年は、期待と不安に胸をときめかせて目をあけ、
後ろを振り返りました。

 

その時、少年の前に立っていたのは、いったい…

(次回へつづく…)

ドラマー誕生秘話(3)

(前々回からの続きです 第3話めです、すいません長くて…(^_^; )



しかし、受験勉強をしなくてはいけない中3の少年は、
この先、いったいどうなっていくのでしょうか・・・



その時、少年はある決心をします。


 


「よーし、ロックバンドを組むぞ。


 バンドを組むのに手っ取り早いのは、高校に行くんだ。


 高校には、いろんなヤツがやってくるにちがいない!
 
 もちろんオイラがドラムをやるのさ。
 
 そのために練習を重ねてきた。自信はある。


 そう、コージー・パウエルのようなドラマーになるんだ!」



当時、情報があまりなかった時代、少年の稚拙な頭には、
人が集まるところは「学校」だ、という単純な思考パターン
しか思い浮かばなかったのです。
 
 
「・・・あ?…え?


 うげげっ!そのためには高校に入らなきゃだめじゃん!」



 高校に行ってバンドをやる。



それまで勉強を全然やってこなかった少年は、それだけを
モチベーションにして、猛勉強に取り組み、なんとかその後、
めでたく地元の県立高校に入学できたのでした。



ロックバンドをやるんだ!そして学園祭の舞台に立つんだ!


そうすれば、女の子にもモテモテさっ!(そっちかよ)



それだけが目的で、高校へ進学した少年は、さっそく初日から、
同じクラスや他のクラスで、楽器ができる人材を捜し始めます。



とりあえずギター、ギターだよ。これがいなくちゃ話にならない。


リッチー・ブラックモアやジミー・ペイジ、マイケル・シェンカー、
エディ・ヴァンヘイレン、それにスティーブ・ルカサーのような
イカしたギターが弾けるヤツだ!(いるのかよ)



ベース?げっ、ベースって地味じゃん。だれもやってないかも。


いや、そんなことはない。中学生ならまだしも、高校生なんだ
から、バンドの本当の土台を支えるベースの渋さを知っている
ヤツが絶対いるはずだ。



それにキーボード、キーボードにはちょっとうるさいよ、オレ。


なんせシンセオタクだからね。(関係ない)



えーと、あと、ボーカル……えぇ?ボーカル?…


おいおい、ちょっとまて。外人のロック歌手なみの歌をうたえる
ヤツなんて、実際いるのかよぉ…


外人みんな声高いし、それに、高校生があんな風にシャウト
するのは、ちょっと恥ずかしいぞ…


そこまでなりきれるヤツがいるのか?



希望に胸を膨らませて、高校にやってきた少年の心には、
一抹の不安がよぎりました…



そこで、少年はまだ入学早々であるにもかかわらず、密かに
あることを始めるのです。



もし、ボーカルが見つからなかったら、最悪、自分で歌えるように
しておかないといけないよな。


でも、あんな高い声出るのか?…


そもそもドラム叩きながら歌えるのか?…


いやいや、そんなことをいっている場合じゃない。


高橋幸広だって、ドラムやりながら歌ってたじゃないか。


ナイトレンジャー(懐かしー)のボーカルもドラマーじゃん。


いや、スティングみたいにベースが歌うっていうのはどう?


それに、ドラムだってコーラスくらい出来ないとなー。


クイーンのロジャー・テイラーはめっちゃ高い声出すし。


クイーンのコピーするんなら、コーラスは絶対不可欠だ。



そうだ、もう決めたんだ、オレはロックバンドをやるんだ。



でも、自慢じゃないが、小中学生の頃は、音楽の先生に、
声は大きくていいが、その音痴を何とかしろ!といわれていた。


うーん…


よし、練習だ。


なにごとも、練習なしではうまくならない。



その日から、少年は歌の練習を始めました。


しかも、ヘヴィメタですよ、ヘヴィメタ。(笑)


少年の家は、当時マンションだったのですが、大音量のラジカセ
に合わせて部屋で歌っていると、両親は気でも狂ったのか!
といいはじめ。隣近所、というよりマンション全体に響き渡る
その歌声(シャウト)に、すっかりボクは近所の変わり者になって
しまいました。


それからです、近所の人の冷たい視線を感じるようになったのは…



そうこうしている内に、1週間くらい時が流れていきました。



でも、未だにバンドのメンバーは見つかりません…



焦りばかりが募ります…



その時、少年はあることを思いつきます。



おおっ、すっげーいいこと思いついた!


少年は、我ながら自分のアイデアに酔いしれました。



ようし、ほなら明日はこの戦法で、必ずメンバーゲットしたるでぇ!


グズグズしているヒマはないんや、わいは高校にバンドやりに
いっとんねんで!


…と、なぜか関西弁の口調に変わったボクは、明日への決意と
情熱の激しさで、その晩はよく眠れませんでした。



さて、その翌日、少年の取った行動とは…


(次回へつづく…)

ドラマー誕生秘話(2)

(前回からの続きになっています、ここから読む方は
 ぜひ、そちらを先に読んでからお読み下さい)


シンセと格闘していたそんな時、ふと見ると、目の前に
従兄弟のドラムセットが置いてあるではありませんか…


その頃、バンドのドラムは、同じクラスの友達がやっていた
のですが、彼は板についてきた8ビートや、ぎこちない16
ビートを、その時、曲に合わせて練習していました。


それを見ていて、当然自分もやってみたくなりますよね…


それで、「ちょっとやらしてくれ!」という感じで、ドラムセット
に座ってみました。


おおー、なんかいい感じ…


得意の自己暗示をかけます。


「オレは高橋幸広だ…高橋幸広だ…」


まずは、形から入る!(これ、マイ基本)


YMOのドラマー、高橋幸広になりきったボクは、
見よう見まねでドラムを叩いてみました。



すると・・・



あれ?



おおっ!



なにぃー。



ええーっ。



で、できるじゃん!



なんと始めから、曲に合わせて叩けてしまったのです。


これには友達もさすがにビックリ。



「もしかして、オレって天才?」



もともと、なりきり系が上手だったボクは、たぶんその時は
顔の表情まで高橋幸広になりきっていたと思います。(笑)


しかも、いつの間にか叩きながら歌まで歌っている自分…


(まあ、YMOのドラムパターン自体はシンプルで、
 テクニック的には、さほど難しくはなかったのですが)



うっ、やばいかも…マジやばい…


ドラムって、ドラムって、ドラムって、



「ちょー気持ちいい!」(祝!2004年流行語大賞)



もちろん、後から考えればお粗末な叩き方だったのですが、


これが、ボクとドラムとの出会いとなりました。



その後、シンセそっちのけで、ドラムにのめり込んでいくボク…


それからというもの、毎日、毎日、練習をしてました。


すぐにマイスティックも手に入れて、練習、練習。



いつの間にか、友達よりもうまくなってしまい、


最後は、「もう、おまえがドラムやれよ!」といわれる始末。


それくらい、ドラムが大好きになってしまいました。



そんなこんなで、それなりに充実した日々が過ぎ去り、
ボクは中3になって、高校受験の真っ直中に突入していきます。



その頃、そんな自分に危険な誘惑が忍び寄ってきていることを、
ボクは知るよしもなかったのです。



そう、それまでYMO一辺通りだったボクに忍び寄っていたもの…



それは、「ハード・ロック」との出会い…(ああ、危険だ…)



ボクには音楽におけるメンターだった友人がいたのですが、
(彼はかなり早い時期からボクにYMOを教えてくれた)


受験戦争真っ直中の純朴な少年に、彼は、今度は、
なにやら外人のバンドをたくさん紹介してくれたのです。


「レッド・ツェッペリン」
「ディープ・パープル」
「クイーン」
「レインボー」
「TOTO」
「ヴァン・ヘイレン」


今思えば、ポイント押さえていますよねぇ。
みんな伝説のバンドばかりですもん。


ジョン・ボーナム
イアン・ペイス
ロジャー・テイラー
コージー・パウエル
ジェフ・ポーカロ…


ドラマーの名前だけでもすごい事がおわかりになるでしょう。
(すいません、ドラムの内輪ネタで…)


少し系統は違いますが「ポリス」なんかもYMOつながりで
聴き始めました。


ちょうど時代は、日本でもハードロック、ヘヴィ・メタルが
流行しはじめ、和製ヘヴィ・メタルバンドも出始めた時期。


それまで、シンセサイザーが最高!と思っていたボクですが、


ハードなディストーションでメロディアスなサウンドを奏でる
ギター、めっちゃハイトーンでシャウトするボーカル、ラウドで
重厚なドラムサウンド…特にツェッペリンのジョン・ボーナムの
ドラムは、感受性豊かな中学生には危険すぎました。


「うう、マジ、かっこいい。。。」



極めつけは、その友達に誘われて行ったコンサート…
(今考えると、かなり悪友?)


それは…「MSG(マイケルシェンカーグループ)」in武道館!
 ( ああ、これで世代がバレてしまう…(^_^;  )


これは後に「飛翔伝説」として名盤レコードになりました。


その時、そこでドラムを叩いていたのが、知る人ぞ知る
今は亡き、カリスマドラマー、コージー・パウエル!


そういえば、伝説のドラマーって、なんで皆早死にするんだろう。


ジョン・ボーナム、ジェフ・ポーカロ、そしてコージー・パウエル…
ここに挙げただけでも3人もいる。


ボクはジェフ・ポーカロにはTOTOのライブやドラムクリニック
で何度も会っているし、たぶん、コージーが好きなドラマーは
たくさんいると思いますが、それを生で、間近で見られたのは、
今思えば本当に幸運なことだったんだと思う。


その時の興奮は、今でもありありと憶えている。


マーシャルアンプがいくつも壁のように高く積み上げられて、
まるでサーキットのレーシングカーのような轟音を立てて
マイケルのギターがうねりをあげる。


でも、決してうるさいとは思わなかった。
とてもメロディがキレイで繊細なプレイだったから。


初めて見る、重戦車のようなドラムセット、あんなところまで
手が届くのかよ!ってツッコミたくなるくらいたくさん並べられた
シンバル類、後ろにおかれたドでかい丸い物体(ドラ)


ボクシングシューズを履いたウルフカットの男が、まるで
リングにあがったボクサーのように、派手なアクションで
ドラムを叩きまくる。


特に、2つのバスドラムから叩き出されるドドドドド…と
地響きを立ててお腹にくる低音は、今まで見たことも
聴いたこともない世界でした。


さらに、チャイコフスキーの1812年に合わせてのドラムソロ、
最後には、ドドォーーンと花火が上がる!


あぁ、中学生には刺激が強すぎます。


今では、コンサートでは当たり前になったその光景も、
当時はものすごい衝撃を受けたのでした。


それを目の前で見てしまった純朴な少年…


 


時は思春期、感じやすい(影響されやすい)年頃…



このあと、テクノカットの少年が、長髪のウルフカットに
なっていくのは、火を見るよりも明らかでした…



しかし、受験勉強をしなくてはいけない中3の少年は、
この先いったいどうなっていくのでしょうか。



その時、少年はある決心をします。


(次回へつづく…)





飛翔伝説~MSG武道館ライヴ・完全版(CCCD)
飛翔伝説~MSG武道館ライヴ・完全版(CCCD)
これが、かつてボクが行った武道館ライブ。昔を懐かしむのも良し、逆に若い人はあらたな感動を得るのも良し、世代を超えて良いものは良い。70年代、80年代はそんな音楽がたくさんありましたね。
  • livedoor Readerに登録
  • RSS
  • livedoor Blog(ブログ)