「おーい!!! カミエルー!Lディッシュ、サプラーイ!」
「え?は、はいー、いまやってまーす!」
「おっせーーんだよ、おまえ!はやく洗えよー!」
「す、すいませーん!」
夏休みに入り、バンドのメンバーは自分たちの楽器を
手に入れるため、それぞれがアルバイトを始めました。
キーボードの畑山くんは、自宅近くの弁当屋。
ベースの武田くんは、夏休み中、住み込みで軽井沢のペンションに。
ギターの岡本くんは、普段からお昼ご飯を断食して、お金を貯めているので、
夏休みは、ひたすらギターを練習中。
そして、ドラムのカミエル少年は、国道沿いのファミレス
「デ○ーズ」で、厨房の皿洗いを始めたのでした。
『ひえぇ〜、マジかよ〜、まだこんなに洗いモノ残ってんだぞー!』
真夏の厨房の中、吹き出る汗を拭いながら、
山のように積み重なる洗い物を前にして、
少年は食器たちと日々格闘をしていました。
もちろん、常時そのように忙しいわけではなく、大変なのは
お客さんが集中するお昼時と、夕食時の時間帯。
その時間は、まさにファミレスは稼ぎ時です。
直接お客さんと接するフロントだけでなく、厨房のコック隊や
ディッシュウォッシュなどの裏方も、ちょっとした戦闘状態です。
最年少である少年は、当然その場では下っ端状態(笑)
「てめぇ!まぁーだ洗ってねえのかよ!さっさとやれよー!」
と、裏方では罵声が飛び交います^^;
次々と押し寄せる食器の汚れを、まずは大雑把に洗い分けます。
特にグラタンなどの落ちにくい汚れは、お皿に残らないように念入りに
磨きます。次に仮洗いをしたものを、大型の皿洗い機に入れ、
回転ノズルから吹き出る高温のお湯で「ドシャァァーー!」と洗い、
全ての汚れを落とすとともに、お皿の消毒もおこないます。
その後、まだ熱いままのそれぞれの食器をキレイに吹き上げ、
最後はそれぞれの場所におさめて完了です。
この流れを、一日何回も繰り返します。
昼時のピークが過ぎると、ようやくバックスペースに行き、
氷入りの水を飲むことができます。
汗だくの少年には、この一杯は至福の瞬間です。
『ふぁぁ〜、生き返るぜぇ〜』
たまに、フロントの先輩アルバイトの女性が、
「暑いでしょー、コレ飲んでがんばって!」
と、オレンジジュースをこっそり差し入れしてくれました。
昼過ぎから、夕方にかけて、一通りすべての洗い物が終わると
次は外に出て、大量のゴミ出しと、周辺の掃除、窓ふき、
そして縁側の植物への水撒きです。
『ひょえ〜、外もかなり暑いけど、ま〜だ、風があるぶん、
中の暑さよりはマシだよな〜^^;』
少年は水撒きの水を顔や腕にかけて、一瞬ヒンヤリとする気持ちよさに
しばしの安息を得るのでした。
その当時の高校生のアルバイトは、たしか時給460円くらいだったと思います。
バイトが終わるのは夕飯時のピークを過ぎてから。
一日中立ちっぱなしの仕事で、足が棒のようになっています。
ようやく自転車で帰路につく少年は、
「ふぅ〜、お金を稼ぐってけっこう大変な事なんだなぁ〜」
と、少しだけ社会の厳しさを知ったのでした。
「あ、そういえば、武田のヤツ!
あいつは今頃、涼しい軽井沢でヨロシクやってんだろうなぁ・・・
岡本はきっと今もギター弾いてるよな・・・
そうそう、畑山もシンセ買うためにがんばってるんだろうな・・・」
少年は薄暗くなった空を見上げながら一人呟きました。
こうして、少年の夏のアルバイト生活も10日ちかく経ち、
皿洗いの仕事もようやく板についてきたある日、
一通り洗い物を仕上げた少年は、突然店長に呼び出されました。
「おい、カミエル、お前さ、ちょっとフロント(接客)やってみないか?」
「は?」
「制服用意してあるから、ちょっとそれに着替えてこい」
「は、はい・・・」
言われるままに、少年がフロント用の制服に着替えると、
「おー!なかなか似合うじゃないか。
よし、お前はこれから接客の研修受けろ。
先輩の松山さんにいろいろ教わってもらうからな。
お前にはフロントもバックも両方できるようになってもらうぞ」
「え?マジですか?お、オレ、接客しちゃっていいんですか?」
「ははは…そうだよ、これからは暇な時間帯は新入りの
アルバイトにディッシュ・ウォッシュやらせるから、その間は
お前にフロントやってもらうからな。がんばってくれよ!」
「はい!」
少年はフロントの高校3年生の先輩アルバイトの女性から
挨拶の仕方や注文の取り方、テーブルクリアやお皿の持ち方など、
フロントでの基本的な事を教わっていきました。
なにより、お客さんが来店した時に
「いらっしゃいませ、デ○ーズへ、ようこそ!」
と、定番のフレーズを言えることが、少年はなんだか無性に
嬉しかったのでした。(ちなみに今はどうなんだろう?(笑) )
『へへへ…これ、一度言ってみたかったんだよなー!(^u^)』
もちろん、接客はそれなりに大変なのですが、暑苦しい厨房から
解放され、クーラーの効いた店内での仕事は、少年にとっては
まさに天国のようでした。
『先輩の松山さんも優しいし、いやぁ、いいよなぁフロントは〜!』
お客さんと接することは、緊張感はありながらも、こちら側の
サービスにもお客さんから直接レスポンスが返ってきます。
少年は満面の笑顔で、一生懸命に
「いらっしゃいませ、デ○ーズへようこそ!」
「お食事のほう、お持ちいたしました」
「ありがとうございます、またのお越しをお待ちしております」
と、明るく元気に、大きな声で接客をしていきました。
その姿を見ていて、店長も少年にはまずまずの評価をしてくれたようです。
昼時は厨房で皿洗い、午後から夜にかけてはフロントで接客という、
2パターンの仕事をこなすようになって、だんだんと仕事や職場にも
慣れてきたある昼下がり・・・
少年はいつものように、来店するお客さんを出迎えるように、
入口のところに立っていました。
するとそこに、少年の高校の制服を着た女子生徒の集団が
ゾロゾロと店の中に入ってきたのです。
『げっ!同じ高校じゃんか!やべぇな〜』
少年はそう思いながらも、いつものように
「いらっしゃいませ、デ○ーズへようこそ!」
と、元気よく声をかけました。
しばらくして、10名くらいのその集団の中から、
「あれ?・・・あーーー!」
と、声をあげた女子生徒がいました。
少年が、びっくりして振り返ると
そこには!
『どえぇーー! ま、マジ・・・』
なんと、そこには少年が淡い恋心をよせているクラスの女の子、
あの宮里悦子さんが立っていたのでした・・・
(つづく・・・)
「これってデスティニー?!」
嗚呼・・・しかし・・・
なんだかんだで、ブログ更新遅いなぁ・・・おいら・・・^^;
































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